炎神戦隊ゴーオンジャーGP39

東映炎神戦隊ゴーオンジャー」。
第三十九話「郷愁ノコドモ」。會川昇脚本。佛田洋監督。
蛮機族ガイアークの害気大臣キタネイダス(声:真殿光昭)は「毎日が御祭ワッショイ作戦」を立案し、ヤタイバンキ(声:坂口候一)を開発。夏祭や秋祭のとき神社等の参道に連なる焼リンゴ・ヤキソバ・綿菓子や仮面や風船や風車の屋台の化け物。祭そのものではないが、祭のようなもの。少なくとも子どもたちにとっては祭そのもの。だが、もはや機械でもなければ産業でもない。とはいえ害気目における「気」を、単なる「大気汚染」等に云うような「気」に限らず「景気」「熱気」等に云うような「気」をも含意するものと解すれば納得ゆくかもしれない。そう考えると害気目というのは意外に深い。
ガイアークの知将キタネイダス渾身のこの作戦の中身は、子どもたちを祭の気配で呼び寄せて、ヤタイバンキの作り出す祭の空間に招き入れ、祭の楽しさに夢中にさせた挙句ヤタイバンキの囚われ人にしてしまい、長時間かけた教育により、祭のことしか頭にないような祭の囚われ人に育て上げることで、やがては、ガイアークの各種の公害にも全く気付かないような連中にしてしまおう!というもの。かなり永い歳月を要する面倒な作戦で、しかも何十年も費やした末に無意味に終わる恐れもありそうだ。
しかし、ヤタイバンキの作り出した奇妙な祭の空間は、賑やかそうなのに寂しげで、極彩色なのに曇っていて、見るからに寒々しく、恐ろしかった。そもそも楽しげな囃子や賑やかな声で子どもたちを誘い出し、街から連れ去り、消してしまうという話が怖い。ドイツの伝承「ハーメルンの笛吹」を想起せざるを得ない。不条理な童話、伝承の持つ底抜けの怖さを、実に見事に映像化、それも実写化した一話として評価してよいかもしれない。
今回の戦闘ではゴーオングリーン城範人(碓井将大)&ゴーオンブラック石原軍平(海老澤健次)のコンビが大活躍。しかし軍平はヤタイバンキのヤキソバ用の鉄板を顔に中てられ、範人は焼リンゴで釣られて不意を突かれていた。ヤキソバを使った攻撃にはゴーオンレッド江角走輔(古原靖久)も少しは惹かれていたようだが、戦闘の只中には私欲を忘れることができるのが走輔の強さ。もっとも、戦闘の只中にも食欲(そして性欲!)に満ち溢れていることのできる範人には逆の強さがあるということだろう。ゴーオンゴールド須塔大翔(徳山秀典)はヤタイバンキの屋台の景品にされてしまったことをかなり悔しがっていたが、確かに、射的や投げ輪や金魚掬いの類の屋台の景品にされるとは極めて屈辱的な攻撃で、精神的な傷という点を考慮するなら、「こいつ見た目はフザケてるけど、かなり強いッス」というゴーオンブルー香坂連(片岡信和)の言は、「フザケているからこそ手強い」という本質を図らずも突いていると云うべきだろう。