ザ・ベストハウス123緊急特番!ダ・ヴィンチ幻の絵画をついに発見!?

フジテレビ系。「ザ・ベストハウス123緊急特番!ダ・ヴィンチ幻の絵画をついに発見!?」。
二時間の番組だったが、内容としては一時間番組、否、下手すれば三十分番組にしかならない位の分量だったと思われる。そもそも、なぜ今この時期に、このような「緊急特番」が組まれる必要があったのかも解らない。今宵この番組で「解き明かされた」かのように表現された諸事実や諸見解は、番組をよく見れば、決して番組側の調査によって解明されたわけではないと判る。何れも、幾人かの美術史家によって予て主張されていたことに過ぎない。これがNHKであれば、彼等へのインタヴュウを中心にして一つの論争の経緯を解説するという恰好で番組を構成したことだろう。
今宵の番組の事実上の主人公は、レオナルド・ダ・ヴィンチの芸術に詳しいと自称する脳科学者の茂木健一郎だが、見ていて最も気になったことの一つは、彼がレオナルドのことを「ダ・ヴィンチ」と呼んでいたこと。彼に限らず番組の全体が「ダ・ヴィンチ」呼ばわりの連発だったが、無論これは間違いだ。ダ・ヴィンチというのは「ヴィンチ村の出身の」という程度の意味であって、固有名詞ではない。実際この番組でも荒俣宏をヴィンチ村にまで行かせていたではないか。それに「万能の天才」(「万能人」)という称号はレオナルド・ダ・ヴィンチにのみ与えられるものではない。アルベルティをはじめ、ルネサンス時代の偉人は大概「万能人」と呼ばれている。
この番組によると、レオナルドの新発見作品かと云われる「ラロックの聖母」についてルーヴル美術館=フランス文化省フランス美術館局の学芸員(コンセルヴァトゥール[文化財保存監督官とも訳される])は「ノーコメント」の姿勢を貫いているそうだが、なるほど、それが正解だろう。実のところは番組開始からわずか数分間で答えは出ていたのだ。