炎神戦隊ゴーオンジャーGP43

東映炎神戦隊ゴーオンジャー」。
第四十三話「年末オソウジ」。武上純希脚本。渡辺勝也監督。
約一週間後のクリスマスに向けて大いに盛り上がりそうな話の前編。蛮機族ガイアークには新たな幹部として、前回の話に既に姿を現しつつあった掃除大臣キレイズキー(声:竹本英史)が合流した。恐るべき狙撃手であり、西部警察における渡哲也のような声と口調で「おでかけでありますか?ルルルのル」と宣る。掃除大臣という語は総理大臣を連想させるが、どうやらガイアークにおけるこの大臣職は、害水大臣ケガレシア(及川奈央)や害気大臣キタネイダス(声:真殿光昭)のような各「目」を統括する正式の大臣とは同類ではなく対等でもないと思しい。律令制太政官に例えるなら、害水目や害気目の各大臣が左右の大臣であるとすれば掃除大臣は令外の官としての内大臣征夷大将軍の類ではないだろうか。
世界を汚すことを目指すガイアークにあって「掃除大臣」とは異様だが、その意は、キレイなものを一掃することにこそある。彼は既に「サウンド・マジック・プリズム」の「三つのブレインワールド」を一掃してきたらしい。あの巨大怪獣ロムビアコも先週の「魔法の杖」も、帰る場所を失ってしまったのか。
キレイズキーの攻撃は炎神たちを無力化し、ゴーオンジャーもゴーオンウイングスも打つ手を失ったが、こういうときこそ、ゴーオンレッド江角走輔(古原靖久)の熱血が最も望まれる場面なのだ。「打つ手がなくてもガムシャラに立ち向かう!それがゴーオンジャーだ!」という言は走輔の戦い方をよく表現している。
だが、少年時代の走輔は、今とは少し違っていたらしい。キレイズキーの攻撃を受けて飛ばされて森の中に落ちた彼は、その森の中で、クリスマスイヴに子どもたちへ贈物を配るため聖夜界(クリスマスワールド)から人間界へ飛んで来たサンタクロース(桜金造)と遭遇した。この「サンタのおっさん」が走輔に手渡した贈物は、かつて少年時代の走輔(照井宙斗)がサンタクロースから受け取った贈物と同じものだった。赤いレーシングカーの玩具で、少年時代の或るクリスマスの夜、サンタクロースの来るのを心待ちにしながら赤いクレヨンで車の絵を描いていたときの、その車の姿をそのまま形にしたような玩具だった。当時から既にレイサーになりたいと熱望していた彼は、周囲の者から馬鹿にされ、笑われ、苛められていたらしい。そんな夢なんか実現するはずもない!と。今でこそ頼もしい親分肌で何時も陽気で元気で活力に満ちた不屈の男子である走輔も、かつては小学校の勉強も何もできなくて、恐らくは絵を描くことと夢を見ること位しか楽しみがないような、かなり内気な少年だったようなのだ。
でも、周囲の嘲笑、イジメに屈して本気の夢を諦めかけていた少年時代のあの夜の、サンタクロースとの出会いを機に、夢を諦めてはならないことを彼は学んだ。今日のこの森の中での再会はそのことを思い起こさせた。その熱気が他の皆をも奮起させた。