セレブと貧乏太郎第十話
フジテレビ系。「セレブと貧乏太郎」。
脚本:樫田正剛。音楽:山下康介。主題歌:いきものがかり「気まぐれロマンティック」。挿入歌:Safarii「Hero」。プロデュース:土屋健。演出:佐藤源太。第十話。
安田幸子(国仲涼子)の唐突に極端な豹変の、制作者側の意図を想像することはできる。これまで常に佐藤太郎(上地雄輔)や美田園アリス(上戸彩)の味方であり続けた幸子があんなにも極端に態度を変えて後藤田司(柏原崇)の腹心となり、太郎やアリスに敵対するに至った裏には何か事情があるに違いない!真の狙いは何か?と視聴者に疑問を抱かせ、来週の最終回へ向けて関心を高めたいという意図があるに違いないからだ。そのことは、郡司康夫(風間杜夫)の後藤田側への寝返りが余りにも稚拙で、その真意が見え透いていることとの対比において強調される。
だが、このドラマ作品の現状は、そうした解釈とか分析とかの観照の行為を全て無意味化する程に、とてつもなく支離滅裂なことになっているとしか思えない。ここで敢えて再び制作者の意図に関して想像するに、恐らく、毎回、何か描きたい場面を一つでも思い付くや、話をその方角へ向けて強引に捻じ曲げ、そこからさらに別の描きたい場面へも強引に捻じ曲げ、そうして一回の話の中でさえも、あらゆる方角へ話を二転三転させるような真似を続けた結果、話の流れも全体像も何等の統一性もない現状に至った…ということではないだろうか。例えば、財産を失ったあとのアリスの転職先がキャバレーであるということ自体、これまでの物語の流れからは理解できるものではなく、単に、歌い踊るアリスの図を描くためだけに、何の脈絡もなく無理矢理に設定されたとしか思えない。これではドラマになっていない。