宮崎県庁本館についての解説書

宮崎空港で待ち時間があったので搭乗待合室内の売店を見物したところ永井哲雄『宮崎県庁本館-近代の歴史文化遺産-その見どころと歴史』(二〇〇八年十月・鉱脈社)があり、買って読み始めれば面白く、待ち時間で一気に読み終えてしまった。
宮崎の人々は何かと云うと直ぐ神話や古代のことを持ち出すが、その割には歴史的景観や文化遺産を全く保守しようとしない面があり、本書はそうした「現実主義」を厳しく批判しつつ、今や宮崎県内で最大の観光資源になってしまった宮崎県庁本館の歴史的な含蓄や芸術的な豊かさを説くことで、歴史的景観の大切さを普及したいと記している。誠に高邁な趣旨ではあるが、甚だ気になったのは、販売時の所謂「帯」には宮崎県庁を新たな観光名所に変えた張本人である東国原英夫宮崎県知事の顔写真を確り載せているにもかかわらず本書中にはその名が「知事の個人的人気」(p.106)の一語のほかには全く出てこないこと。しかも、宮崎県庁本館に五十万人もの観客を集めた功績は「知事の個人的人気」にだけあったわけではないはずであるとまで述べてある。本書の著者は宮崎県職員OB(元総務部県史編纂室職員)で県内文化財行政界の大物、退職後も県文書センターに嘱託員として勤務しているようだが、現在の県政には批判的なのだろうか。
宮崎空港から福岡空港へ移動し、地下鉄で博多駅へ移動。駅の近くのホテルへ入った。テレヴィを点ければNHKハイビジョンで江戸時代絵画に関する長時間番組「夢の美術館 江戸絵画100選」を放映していた。狩野山雪から武士や公家の絵画、宗達光琳派、文人画を経て浮世絵の解説に入ったところまでは見た。それなりに面白かったが、夕食と買物のため夜八時頃に外出したので、それ以降は見ていない。しかし日本美術史の案内役として小林忠ばかりが出てくるのは何故だろうか。無難だからだろうか。