その時歴史が動いた直江兼続

夜十時からNHK総合その時歴史が動いた」を久々に見た。本年第一回の今宵「戦国にかかげた“愛” 北の関ヶ原 直江兼続の決断」と題し、直江兼続関ヶ原合戦の前後、徳川家康による天下平定の動きに対してどのように考え、どのように行動したのかを取り上げていた。先週から始まった本年のNHK大河ドラマ天地人」において主演俳優の妻夫木聡が演じる主人公が直江兼続であるのは云うまでもなく、今宵のこの番組が大河ドラマの宣伝の一環であるのは見易い。なにしろ解説者をつとめたのも、原作の小説「天地人」著者の火坂雅志だった程。ただでさえ歴史上の人物を無用に美化する傾向にあるのがこの番組だが、しかも取り上げるのが大河ドラマの主人公に他ならなかったこともあって、直江兼続を「義」の人、正義の人とすること甚だしいものがあった気がする。
なるほど確かに直江兼続は「義」の人だったか知らない。しかし彼が「義」に反する敵と見た徳川家康に、上杉や豊臣の「義」を超える「義」がなかったとは云えないはずだ。否、むしろ東照大権現の治世が、云わば最大多数の最大幸福を実現した日本史上稀に見る永い天下泰平の時代の始まりだったことは歴史の証明するところであり、それこそは「義」の極みであると考えてよいのではないのか。天璋院=篤姫を、徳川の「義」の権化とも云うべき勝海舟と同じように扱い、礼賛してきた人々が一年後には逆に、徳川の「不義」を語りたがるとは、何と愚かしい変わり身の早さだろうか。