炎神戦隊ゴーオンジャーGP46

東映炎神戦隊ゴーオンジャー」。
第四十六話「家出ボンパー」。吉本聡子脚本。竹本昇監督。
ボンパー(声:中川亜紀子)が家出するの話。しかも人知れず消えて書置きだけを残したのではなく、皆の前で飛び出して行ったのだ。大声で捨て台詞を吐きながら。その捨て台詞も絶妙だったので録しておこう。「本当はボクなんかいない方がいいって思ってるんでしょ?」「ボクなんかいない方がいいよね?」「どうせボクはポンコツで何の役にも立たないもん!」。
ボンパーがいなければゴーオンジャーこそ「何の役にも立たない」ことになりかねないことはゴーオンジャーの誰もが認識しているだろうし、ボンパーにしても、普段の戦闘において自身の果たしている役割の大きさをよく知っているはずなのに。でも、ボンパーのこの被害妄想気味の悲しみこそが、苦戦している仲間たちを自ら助けたいという感情を燃え上がらせて、後半の奇跡の大逆転を生んだ彼の活躍に繋がったのだ。
ボンパーが被害妄想気味の孤独感を抱くに至った理由とは、劇中に説かれたところによれば、ゴーオンジャーの居住空間であり移動手段でもあるトラック並の巨大キャンピングカー「ギンジロー号」の運転席で、ゴーオンレッド江角走輔(古原靖久)とゴーオンブルー香坂連(片岡信和)の両リーダーが「ポンコツ」とか「役に立たない」とか真剣な顔で話し合っていたのを、当の「ギンジロー号」のことではなく自身のことを語り合っているかのように思い込んでしまったからだった。
だが、ボンパーが「ボクなんかいない方がいいよね?」とまで思い詰めてしまうに至ったことに関連しては、一つ思い当たることがある。昨年八月三日放送のGP34「最初ノエガオ」でのこと。ヒラメキメデスの幽霊ウラメシメデス(声:中井和哉)の崇りによって森の中で動かなくなった「ギンジロー号」の中で連がボンパーと二人で点検をしていた際、巨大な化け猫が「ギンジロー号」に迫っていることに気付いた連はボンパーを車内に置き去りにして一人で森へ逃げ込んだのだ。あのとき既にボンパーは「ボクなんか、置いてきぼりにして化け猫に襲われてもいいんだよね」と思ってしまったかもしれない。
ボンパーが超高速で景色の中を疾走する映像は面白かった。
ゴーオンジャーにおいてボンパーが家出をしたとき、蛮機族ガイアークでも、有能なウガッツ二名が職場の放棄をしていた。ヘルガイユ宮殿でも、労働者の反抗が始まったのだ。実のところ、ガイアーク三賢人中の筆頭大臣だった害地大臣ヨゴシュタイン(声:梁田清之)が逝去してからというもの、害気大臣キタネイダス(声:真殿光昭)も害水大臣ケガレシア(及川奈央)も、士気が低下しているというか、戦意を喪失しているようにさえ見える。今回の害気目の作戦に至っては全く作戦の体をなしていなかったと云うも過言ではなく、何時ものように「産業革命」を形ばかりは達成しても、それが何一つ反撃にはならなかった程。昔日の威厳はなく、労働者の反抗を招くのも仕方ない。