RESCUE特別高度救助隊第三話

TBS系。ドラマ「RESCUE 特別高度救助隊」。第三話。
脚本:山浦雅大。音楽:羽岡佳。主題歌:KAT-TUN「RESCUE」。プロデューサー:加藤章一佐藤敦司。製作:ドリマックス・テレビジョン&TBS。演出:松田礼人。
古賀敏也(浅利陽介)の死を、所謂「殉職」と認定してよいのかどうかを知らない。だが、劇中の横浜市安全管理局では殉職として扱われ、最高度の敬意を払われていたことを、ここでは前提しておく必要がある。彼の殉職は、北島大地(中丸雄一)と不動雅志(山本裕典)との対立の意味を明確化させたが、やがては彼等二人をも含めたレンジャー訓練生七名全員の心を一つにした。そうしたドラマの構成という点から見ても、彼の決死の救助活動は極めて意義深かったと云わなければならない。
救助隊員は自身の生命を賭してでも要救助者を救出しなければならない!という北島の信念は自身の幼少期の記憶に基づいている。かつて自身が幼時に特別高度救助隊員によって救助されたことがあったが、それと引き換えに、彼を救助してくれた隊員の宮崎志郎(山本耕史[友情出演])が生命を落とした。要救助者を救出した代わりに自らの生命を落とした古賀に対する彼の敬意は、同時に、かつて自身を救助してくれた亡き宮崎隊員に対する敬意と同一であり、その点において、救助活動にかける彼の思いは、かつて宮崎隊員の同僚としてその殉職の現場にも立ち会った特別高度救助隊の現在の隊長、徳永克己(石黒賢)の思いと同一でもある。
もちろん徳永隊長は、救助のために隊員が自らの生命を顧みないことを推奨するわけではない。「必ず生きて帰る」のでなければならない。自らの生命を落としてしまうようでは隊員としては失格であると云われざるを得ない。でも、それでもなお、生命を賭してでも救助活動を全うした者に対しては最高度の敬意を捧げると云うのだ。横浜市消防訓練センター訓練課長の大八木誠司(山下真司)が生前の古賀を含めた八人のレンジャー訓練生に対して正解のない難問を提起したのも、このような情熱と冷静との間の、救助隊のパラドクスについて彼等に考えさせたかったからだろう。
横浜市安全管理局警防部警防課管理官の芹沢忍(石橋凌)もそのことを知るから、古賀の死の直後の、レンジャー訓練生に対する講義を徳永隊長に任せたのだ。その狙いはレンジャー訓練生たちの決意を新たにさせ、結束を固めさせることにあったろう。実際、講義において徳永隊長の語った亡き宮崎隊員への思いは、古賀の死に直面したことでレンジャー訓練生たちが抱き始めていた思いに明確な形を与え、そのことが、直後の、救助活動の現場における七人の結束を生み出したに違いない。
ここにおいて救助にかける北島の熱い思いは皆を鼓舞したが、救助を成功に導くためには、不動の冷静な判断、手塚豊(増田貴久)や小日向剛(大東俊介)による指揮系統や救助体制の迅速な確立、そして何よりも七人全員の団結が必要だったのは明白だ。
ところで、消防訓練センターの大浴場の洗い場で、体を洗っている不動の大胆な後姿には驚かされた。このドラマで最もよく脱ぐのは彼だ。
古賀の亡くなったあとの救助活動の直後、レンジャー訓練生を訪ねた祖母の美枝子(大森暁美)が届けた重箱の中の、生前の古賀の大好物だった大きなオニギリを手塚が不動に食わせた場面は、不動の冷静な姿勢の奥の熱い情と、手塚の懐の深さをよく物語る。