月九ヴォイス第九話

フジテレビ系。月九ドラマ「ヴォイス 命なき者の声」。第九話。
脚本:金子茂樹。音楽:吉川慶&Audio Highs。主題歌:GReeeeN「刹那」。プロデューサー:瀧山麻土香&東康之。制作:フジテレビドラマ制作センター。演出:成田岳
加地大己(瑛太)が宇野稔彦(竹内寿)に対して論じたことは、理屈としては正しいのかもしれない。だが、父が莫大な借金を遺して自殺して、保険金も下りる見込みは皆無と決まり、今後どのようにして生きてゆけばよいのか、否それどころか一体どうにかすれば生きてゆけるのかどうかも判らず途方に暮れているまだ中学生の少年に向かって、あのような説教をすることが甚だ無神経であることも知らなければならない。父を亡くして悲しんでいるのは彼なのだ。加地大己ではない。たかだか一介の法医学の学生の立場で偶々解剖をしたに過ぎないだけの者が、どうして亡き人の「声」を語る(騙る!)ことができると思い込めるのか。少年の心に残る亡き父の思い出の一つさえも知らないような者が、いくつかの証言と解剖の結果だけで全てを判ったつもりなのか。傲慢だ。何の権利があってあんな偉そうな口を叩くのか。大学医学部の学生として何一つ不自由なく生活している加地大己には、恐らくは大学どころか高校にさえ通いたくとも通えなくなるだろう少年の悔しさが全く見えていないということも確かだろうが、それ以前に、そもそも加地大己には人間の感情が見えていないと見るべきだろう。