侍戦隊シンケンジャー第五幕

東映侍戦隊シンケンジャー」。
第五幕「兜折神」。脚本:小林靖子。監督:竹本昇。
今朝のは「殿様」ことシンケンレッド志葉丈瑠(松坂桃李)の話。幼少時に父を亡くしたため自由な少年時代を知らないまま家督を相続せざるを得なかった彼の、孤独と禁欲と忍耐。そしてそれを厳しくも温かく見守り続けてきた家老の日下部彦馬(伊吹吾郎)。二人の関係は封建時代の主従関係であると同時に、親を亡くした少年と親代わりをつとめた大人との間の親子のような関係でもある。
遊びたい盛りに自ら遊びを禁じて修業に励まなければなければならない立場に置かれた「殿」=志葉丈瑠の、それでも幼くて無邪気で、しかも怖がりだった頃のことを懐かしく思い出して笑顔になっていた彦馬殿の様子は、父親代わりというよりは、まるで孫を溺愛する祖父のようでさえあったが、そんな彦馬殿の様子を見て少し照れたように笑んだ「殿」の表情も、愛されて育った普通の少年のようだった。
今や「殿」も立派な青年に成長したとはいえ、まだ若く、これから学ばなければならないこと、身につけなければならない技は多い。幼少期よりも一段と禁欲的に自らを律して修業に励み続ける「殿」の健気な姿が印象深く描かれたが、さらに味わい深かったのは、余りにも過酷な修業を自らに課して寺院の庭に倒れこんで気を失っていた「殿」の寝顔を見て、彦馬殿が泣く泣く目を覚まさせ、外道衆への合戦へ向かわせた場面。慈愛を自ら押し殺し、天命に生きる忠臣義士の姿を見た思いがする。花は桜、人は武士。
彼が自らに課した過酷な修業のゆえに体中に傷を負い、火傷まで負っていたはずのその痛ましい姿を知るのは、彼自身と彦馬殿(そして黒子たち)のほかは多分、吾等視聴者だけだ。その姿を知るからこそ、手強い外道衆を相手にシンケンブルー池波流ノ介(相葉弘樹)等四人が苦戦していた現場に堂々颯爽と現れた白い衣に青い袴の「殿」=志葉丈瑠の凛々しさが一段と気高く見えたのだ。
ところで。「スーパー戦隊」各作品における音楽の心地よさには予て常々感心してきたのだが、やはりこの番組の主題歌も実によいと思う。今朝の話において志葉丈瑠の見せた裏面の健気な表情豊かさと表面の無表情な厳しさから生み出される英雄性を堪能したあとにエンディング主題歌を聞くと、いよいよ魅力的に響いてくる。