絶対彼氏最終章

フジテレビ系。ドラマ「絶対彼氏 最終章」。
原作:渡瀬悠宇絶対彼氏。フィギュアなDARLING」。脚本:根津理香&深沢正樹。主題歌:絢香「おかえり」。音楽:福島祐子&audio highs。制作:フジテレビ&共同テレビ。演出:土方政人
昨年の四月から六月にかけて放送されたドラマ「絶対彼氏-完全無欠の恋人ロボット」全十一話の三年後を描く「最終章」。この最終章が真に最終章の名に値するかどうかは、昨年の春の全十一話においても少しは触れられた物語の主題それ自体に備わる恐るべき空虚感のようなものを、一体どこまで描き出せるかにあったと思う。その点から考えれば、それなりに意味ある最終章になり得ていた気がする。
予め「完全無欠の恋人」として振る舞えるよう設定されて制作されたロボットと、人間との間に本当に恋は成立するのか?という問題がこのドラマの主題の根底にあり得るとすれば、その問題に対しては、ロボットがロボットでしかない限り、「否!」と答えるほかないだろう。昨年六月十日放送の第九話において喫茶店主の若林ふじ子(真矢みき)がロボット制作者の並切岳(佐々木蔵之介)に対して発した「なぜ恋人ロボットなんか作ったの?」という問いが、物語の主題に備わる矛盾と不条理を鋭く抉り出そうとしていた。ところが、肝心の井沢梨衣子(相武紗季)が、恋人ロボット「理想の彼氏」天城ナイト(速水もこみち)に対して中途半端な情を抱いてしまった所為で、この不条理は誤魔化されてしまった。結局、天城ナイトの「家電」としての寿命が尽きることで奇妙な両思いの関係が自然消滅することでしか、井沢梨衣子は人間同士の恋へ向き直ることができなかったのだ。
この設定の持つ解決し難い矛盾と不条理を改めて問い直そうとしたのが今宵の最終章だったわけだが、ここでも井沢梨衣子は物事の本質に真剣に向き合うこともないまま、逆に、ロボットでありながら「自我」を持ち始めた天城ナイトの側から、この矛盾と不条理の耐え難さを突き付けられてしまったわけなのだ。この女は今後もこの調子で、人生から何も学び得ず何の成長もないまま生きてゆくのかもしれない。
どう転んでもグロテスクで不快な怪談にしかなりようもない話を何となく美談のような感じに味付けして誤魔化そうとするのは最近のフジテレビのドラマ制作の特徴のようで、昨日で終了した月九ドラマ「ヴォイス」はその極端な作例だったと云えそうだが、この「絶対彼氏」の場合は、物語の設定の孕んでいる怪談にしかなりようもない恐ろしさを、途中までは色々誤魔化して娯楽性を打ち出しつつも、それなりには描こうとしたと云えるかもしれない。
ところで、浅元将志(中村俊介)と浅元創志(水嶋ヒロ)の兄弟の事業は一体どうなったのか。約二時間(放送時間帯としては21:00-23:18の138分間)も費やしての折角の長時間ドラマだったのに、その辺までも誤魔化されてしまっていた気がするのは惜しい。