仮面ライダーディケイド第十話

東映仮面ライダーディケイド」。
第十話「ファイズ学園の怪盗」。脚本:會川昇。監督:柴崎貴行。
前回、「仮面ライダー剣」の世界におけるボード食堂に現れた「食い逃げ」の人が、今回、「仮面ライダーファイズ」の世界にも出現した。その名を海東大樹(戸谷公人)と云う。仮面ライダーディエンドに変身する。あの鳴滝(奥田達士)でさえ彼には容易には手出しできないらしい。そうした謎の人物が、仮面ライダーディケイド=門矢士(井上正大)に対抗し始めた。
ファイズの世界における初めての朝。光写真館の食堂。海東大樹が門矢士のために拵えた豪勢な朝食。全て門矢士の好物ばかり。オルフェノクとオミオツケとの間には何の関係もないことを自分なりに確認して安堵しながらオミオツケを味わっていた光栄次郎(石橋蓮司)の隣で、門矢士に続く光家の二人目の居候、小野寺ユウスケ(村井良大)は「この味噌汁、美味過ぎ!」と感動したが、光栄次郎は「わたしが作ったのより?」と急に落ち込みつつ彼を睨み付け、それに気付いたユウスケ、「あ…、いや…、何時ものに比べるとイマイチです」と露骨な言い訳をして笑み、光栄次郎も笑顔で「イマイチだ」と呼応しながら満足した表情でオミオツケを味わった。
この愛らしい小野寺ユウスケ役を好演する村井良大の出番がこのところ妙に少ないのは伝聞するところミュージカル「テニスの王子様」の地方巡業に参加しているからだとか。不図その公式サイトを見れば井上正大も氷帝学園跡部景吾の役で出演していて、村井良大が演じている役も氷帝学園宍戸亮であるから同じ学校の生徒役であるわけだが、流石に井上正大は仮面ライダーの主演であるから地方巡業には参加しようがないのか。その代わり今朝は「仮面ライダーディケイド」におけるファイズの世界で、門矢士という名のテニスの王子様を演じた。
対戦の相手は、名門高等学校「スマートブレイン・ハイスクール」における生徒たちの中のアイドル、文武両道に秀でた傲慢な四人衆、「エフ・フォー」ならぬ「ラッキークローヴァー」。四人とも正体はオルフェノク。タイガーオルフェノク=百瀬の役に三浦涼介、ドラゴンオルフェノク=玄田の役にCHIKARAが配されているのだが、なるほど、巧い配役と見受ける。オルフェノクの姿形のデザインに貴人風な印象があるので、「花より男子」風の学園のアイドル衆に見立てたこと自体が実に巧いと思える。
学園の征服を企てる「ラッキークローヴァー」の所業は悉く、学園の守護神とも云うべき正義の味方、仮面ライダーファイズの活躍によって阻まれていた。当のファイズの正体は、学園のアイドル四人衆とは正反対の、地味な写真部の地味な生徒、尾上タクミ(制野峻右)だったが、しかもそのさらなる正体がウルフオルフェノクであることも、変身できない状態の彼とタイガーオルフェノクとの間の戦闘の過程で図らずも露呈してしまった。学園のアイドル四人衆と学園の守護神が両方ともにオルフェノクだったという事実は、生徒たちの間に一体どのような動揺や恐怖を生じることだろうか。興味深い展開を見せ得ると想像される物語の設定だ。わずか二週間だけで終結してしまうのは実に惜しいと思われる。
今朝の最も恰好よかった画としては、門矢士がオルフェノクを蹴り飛ばしながら仮面ライダーディケイドに変身したところの一連の動作を挙げなければならない。井上正大は只者ではないと思わせた瞬間だった。