スマイル第三話
TBS系。金曜ドラマ「スマイル」。第三話。
脚本:宅間孝行。音楽:山下康介。プロデューサー:瀬戸口克陽&高成麻畝子。演出:石井康晴。
このドラマにおいて数少ない善良の人の一人、弁護士の伊東一馬(中井貴一)が、日本の心ということを強調し、現今の日本における韓国ブームの類に反発を感じている様子であるのは、恐らくは彼自身が在日韓国人であることを捨てて日本人になり切ろうとしているからに他ならないだろう。そのことが、正真正銘の日本人たちの間で韓国ブームが能天気に語られることとの対比において強調された。そこだけは面白かったと思う。とはいえ、日本人は韓国文化を愛好し、韓国人はそのことを苦々しく思う…という劇中の構図は現実世界とは余りにも懸け離れ過ぎてはいないだろうか。むしろ現実は逆だろう。本当に盛り上がっているのかどうかも判らないような得体の知れないブームなるものに、健全な人々は戸惑っていることだろう。
不図思うのは近代日本料理の一つ、焼肉のことだ。明治期以降の西洋料理の受容の歴史は、西洋美術の受容の歴史等と同じく和魂洋才、和様化の歴史であり、焼肉もまた、トンカツやコロッケやアンパンやスキヤキ等とともにその産物に他ならないはずだ。それなのに、多分、せいぜい十数年ばかり前からだろうか、どういうわけか焼肉を韓国風に装う奇妙な風潮が広がり、何時しか、それを当たり前のように語る「空気」さえも出来上がってきている。そのことに違和感を禁じ得ない人々は、三十歳代以上の年齢の日本人の間には少なくなかろうと思われる。
このドラマ「スマイル」に対して感じる違和感は一寸それに近いと云えるかもしれない。このドラマに描かれる日本国民の多くは冷酷非情の差別主義者であり、日本国政府は悪事を企てる組織であると見受けるが、これを日本の善良な(換言すれば、テレヴィや新聞の権威を疑うことを知らない)テレヴィ視聴者に向けて放映することによって制作者は何を狙っているのだろうか。