木曜劇場BOSS第五話

フジテレビ系。木曜劇場「BOSS」。第五話。
脚本:林宏司。音楽:澤野弘之和田貴史林ゆうき。プロデュース:村瀬健&三竿玲子。制作:フジテレビドラマ制作センター。演出:光野道夫。
田島慎吾(山田孝之)は、高校時代の同級生三人を殺害した凶悪犯であるし、警察への逆恨みによる一警察官の誘拐拉致の犯行に関しては許し難く軽率でもあると云わざるを得ないが、それでもなお、凶悪な彼を「悪」と断罪することは難しい。彼が殺害した三人の男こそは、かつて高校時代の彼を苛めて殆ど殺しかけていたのみか、苛められていた彼を助けてくれた熱血漢の正義の少年である江川次晴(白石涼那)を彼の代わりに血祭に挙げて遂には殺害してしまった正真正銘の悪だったからだ。しかも三人は、一人の人を殺害したにもかかわらず、むしろ「一人しか殺害していない」ゆえに死刑にもならず、早くも刑期を終えて既に釈放されて、己等の罪を過去の武勇伝のようにさえ思っていた。凶悪犯=田島を動かしていたのは、かつて彼を助けてくれた「江川君」への感謝と愛と、彼を助けることのできなかった後悔と謝罪、そして何よりも「江川君」を殺害して反省することもない三人の男への正義の怒りに他ならない。これは犯罪ではあるが、悪事であるとは思えない。
苦闘の末に事件を解決した警視庁刑事部捜査第一課特別犯罪対策室の室長の大澤絵里子(天海祐希)の、木元真実(戸田恵梨香)への叱責と自身の反省が素晴らしく恰好よかった。木元の暗く冴えない過去と屈折に対する岩井善治(ケンドーコバヤシ)の一寸した共感も描かれた。彼の人物像がさり気なくも立体感を帯びてきたと云えるだろう。