アイシテル-海容第九話

日本テレビ系。ドラマ「アイシテル 海容」。第九話。
原作:伊藤実。脚本:吉本昌弘。演出:国本雅広。
迂闊にも前半を見逃したが、特に大きな進展はなかったように見受ける。当然だろう。なぜなら事件の概要は先週の第八話までの時点で既に解明された上、事件に対する被害者と加害者それぞれの関係者の心情も概ね行方を定めつつあると見えていたからだ。最終回は次週ではあるが、物語自体は事実上この第九話で終わったと云うも過言ではなかろう。あとは多分、野口智也(嘉数一星)の母さつき(稲森いずみ)と、小沢清貴(佐藤詩音)の母の聖子(板谷由夏)との間の、事件における加害者の母か被害者の母かという立場の違いを超えた「悲しみの母」としての共感を確認し、幾らかの後日談を描くだけだろうか。
とはいえ物語の本筋から離れたところに味わうべき場面があった。さつきが一家の生活のため、近所付き合いのない(ゆえに正体を知る者のいない)他所の町にある惣菜屋の作業場で働き始めたところ、その店で同じように働く同年代の主婦たち数人が、作業の手を休めての無駄話の中で、それぞれ自身の子どもたちの話をして盛り上がっていた場面だ。さつき一人だけはその輪に入ることもできず、黙々と働くしかなかった。さつきは智也を自慢の吾が子として語りたいし、本来は語り得たはずであるのに、今は自慢することができない。それどころか吾が子の存在を知られることさえも避けなければならない。この小さな出来事は、行く末の暗さを予告するかのようだ。