月九ブザービート第八話-日高川清姫伝説

フジテレビ系。月九ドラマ「ブザー・ビート」。第八話。
脚本:大森美香。演出:西浦正記。
川崎智哉(伊藤英明)が米国ボストン出張のため職場を留守にしている今、宇都宮透(永井大)が何時も寂しそうにしていることが明らかにされた。ここまで執拗に両名の関係が描かれてきてもなお最終的に宇都宮の想い人が実は川崎ではない別の人だったという話に落ち着くようなことにでもなった場合、もはやドラマ制作の姿勢それ自体が間違っていたということにしかならないのではないだろうか。
上矢直輝(山下智久)は、かつて交際していた七海菜月(相武紗季)の前では殆ど常に性的に淡白で、現代用語の所謂「草食系男子」のようにさえ見えた程だったが、今や一転、新たに交際を始めた白河莉子(北川景子)に対しては性欲旺盛にして精力絶倫。草食系どころか「肉食系」そのものと形容せざるを得ない。彼の正体はそれであって、逆に、七海菜月と交際していたときの彼は本当ではなかったのだ。換言すれば、七海菜月に対しては本心では愛を感じていなかったのに、形式的にのみ恋人を演じていたに過ぎない。実に不実と云うしかない。だからこそ本気で欲情することのできる相手としての白河莉子が出現するや、直ちに七海菜月を切り捨てることもできたわけだ。白河莉子に対する最近の七海菜月の悪事の数々は、上矢直輝の切り捨て方が余りにも非情だったことをよく物語る。男の不実が女を暴走させて鬼へ変えるという話は、道成寺縁起の日高川清姫の伝説で吾等日本人には馴染み深い。そういえば安珍は白河から来た僧だったか。
思うに、この余りにも欲深い男女の姿を描く物語は、最終的には一種の仏教説話として結ばれるべきではないだろうか。