新番組=オトメン(乙男)秋第一話

今宵からの新番組。
フジテレビ系。「オトメン(乙男)秋」。第一話。
原作:菅野文。脚本:野口照夫。演出:谷村政樹。
先月までは土曜の夜遅くに「オトメン(乙男)夏」として放送されていたのをそのまま火曜の夜早くに移動させたわけだが、驚くべきことに、番組の作りも雰囲気も全てが(「夏」を「秋」へ換えたこと以外は)見事にそのままで、まるで深夜ドラマを早めの時間に放映しているかのようでさえあった。その潔さには感動した。実に素晴らしい。
脇役のはずの磯野かつお澤部佑)が主人公の正宗飛鳥(岡田将生)よりも多くの出番を持っていて活躍していて、見ていて、誰が本当の主人公であるのか判らなくなってくる点に至っては、「オトメン(乙男)夏」時代よりもさらに強化されてしまっているが、この点については諦めるしかないようだ。なぜなら古今の様々なドラマや映画のパロディを幾つも繋ぎ合わせてバロック的な笑いの世界を作るのが制作者の狙いであると思しいからだ。しかるに、物語の本体を担うべき主人公たちにその役割までも担わせるわけにはゆかないとすれば、その分を全て脇役に押し付けるしかないのは肯ける。要するに磯野は第二の(そして真の)主人公に他ならない。
ともあれ、私的には橘充太(佐野和真)の出番が物凄く少なかったのが何よりも残念。剣道部の話だったから、剣道部員ではない彼に出る幕がなかった事情は一応は理解できなくはないが、もともと飛鳥と都塚りょう(夏帆)の恋を取り持ったのは橘であるのだし、「オトメン」という概念を創出したのも彼であるのだから、今宵からのこのドラマを見始める人々のためにも、もう少し工夫して欲しかったところ。
とはいえ、オトメンであることを母=正宗浄美(山本未來)にだけは決して知られてはならない立場にある「飛鳥ちゃん」の身を守るため、そして同時に「りょうちゃん」にも「女子らしさ」の花を持たせるため、咄嗟に的確な嘘をついた橘充太の俊敏な判断と言動は、彼にしか果たせない役割の重要性を端的に表現した良い場面だったと云えるだろう。
もう一点、最後の大乱闘の場面から、何時ものエンディング主題歌に伴われる時代劇風の映像へ、似たイメージを保ちつつ転換してゆく流れは絶妙で面白かった。でも、あれを今回やってしまったら次回以降のエンディングへの流れが不自然に感じられることになりはしないだろうか。