アンタッチャブル第五話-井上正大の瞳は何を見たのか

テレビ朝日系。ドラマ「アンタッチャブル事件記者・鳴海遼子」。
脚本：橋本裕志。音楽：井筒昭雄。演出：唐木希浩。第五話。
端麗な容姿で人気のあるJリーガーの高城健（井上正大）は「アンタッチャブル」の世界で何を目撃したのか。生憎、何一つ見抜けていなかったと云わざるを得ない。一時は結婚を考えたものの異母兄妹であると判明して諦めざるを得なくなり一緒に悩んでいたアイドルの南彩香（松本若菜）が朧げながらも事件の奥に恐るべき闇が潜んでいることを「大体わかった」らしいのと比較するなら、少々不甲斐ない。と云うか「高城」とか「彩香」とか姓や名にも既に醜聞の気配があるのかもしれない。
占い師マーサ（三浦理恵子）のよく当る占いは、探偵学校主宰の楠田信（中村獅童）との連繋によって仕組まれたものだったが、唯一、あの「赤い水が青く変わるとき、恋の運命が動く」という予言は必ずしも外れてはいなかったような気もする。なぜならあのとき鳴海遼子（仲間由紀恵）と本当に一緒にいたのは鷹藤俊一（佐藤智仁）に他ならないからだ。
鳴海と鷹藤の同僚の城之内仁（酒井敏也）は、闇組織の一員であるかに見えて実はその組織から正義感のゆえに足を洗った人物であると（今のところは）判明し、今や両名の同志となった。そして疑惑は樫村秀昭（田中哲司）へ向けられ始めたが、もっと本当に怪しい人物が警視庁公安部刑事の鳴海洸至（小澤征悦）と、部下の片山保（辻谷嘉真）の二人組であることを視聴者は既に知っている。他方、彼等とは別の方向で怪しいと見えてきたのは一流週刊誌「国民ジャーナル」記者の遠山史朗（要潤）。
劇中、鷹藤俊一が時折いかにも怪しげな様子で描かれるのは、鳴海遼子の過去の不幸な事件について彼には何か思い当ることがあるらしいことを示しているのか、それとも単にドラマ制作者が視聴者を欺いているのか。何れにせよ鳴海家の過去の事件には何等かの闇の組織の力、ことによると「名無しの権兵衛」の組織の関与があって、それが鳴海洸至の現在の行動を方向付けているのかもしれない可能性は見えてきていると云えるだろう。