仮面ライダーW(ダブル)第十話

東映仮面ライダーW(ダブル)」。
第十話「Sな戦慄/名探偵の娘」。
脚本:三条陸。監督:柴崎貴行。
今までも何時も楽しめているこのドラマではあるが、今朝の第十話には、普段にも増して見所が多くて見応えがあった。やはり敵陣「ミュージアム」への潜入捜査という極限状況が、予想外の見所を次々に繰り出したからだろう。面白かった箇所を一々挙げてゆけば際限がない。特に印象深かった点だけを二三挙げるに留めるしかない。
数々の見所の最後に登場したのが園咲霧彦(君沢ユウキ)涙のシャワー場面だった所為で彼のみが強く印象付けられてしまうが、実のところ、今朝の見所の多くは左翔太郎(桐山漣)&仮面ライダーWの活躍の場だった。
翔太郎と鳴海亜樹子(山本ひかる)が園咲邸の庭園にある大きな池の畔で語り合った場面の面白さは、亜樹子に対する翔太郎の「保護者」の「目線」からの語りかけが亜樹子には全く通じていなかったところにある。
翔太郎は、探偵業においても人生においても師として尊敬し愛し目標とする「おやっさん」鳴海壮吉の教えを受け、思いを継ぎ得る者として、「おやっさんから託された大事な相棒」である超天才少年フィリップ(菅田将暉)と、「おやっさん」の娘である亜樹子を何としても守らなければならないと決意してきた。そして亜樹子は、実の父でありながら一緒に過ごした時間が余りにも短い鳴海壮吉について余り多くを知らない中、父の愛弟子である翔太郎に対して少々嫉妬してさえもいた。でも、翔太郎にとって亜樹子は「おやっさん」の娘ではあるが、亜樹子にとっては翔太郎は父の愛弟子であり、仲間であってライヴァルではあっても、父の代役ではないのだ。
園咲邸は帝冠様式で造られた壮麗な建物で、まるで東京帝室博物館、東京国立博物館のようであり、庭の畔には円山応挙の絵で飾られた茶室がありそうな雰囲気だったが、園咲家の当主、園咲琉兵衛(寺田農)の勤務先は風都市の博物館であり、まるで国立科学博物館のような館内には、これまでの仮面ライダーWの戦闘に登場したドーパントたちを想起させる恐竜や古代生物の化石が展示されていた。
この少し不気味な記憶を呼び起こすかのような展示内容に驚いていた翔太郎は、「館長」を名乗る園咲琉兵衛に声をかけられ、展示の面白さについて説明を受ける恰好で初の対面を果たしたが、翔太郎は風都博物館長をつとめるこの人物が何者であるのかを未だ知らない。園咲琉兵衛が翔太郎の正体を未だ知らないのか、それとも意外に知っているのかは定かではないが、何れにせよ、このときの彼は、翌日の午後の喫茶の時間に亜樹子がどんな菓子を出してくるのか、その期待感で頭が一杯だったらしい。
園咲琉兵衛は美味の菓子を愛する反面、不味いものをも面白がる寛容な心の持ち主と見受ける。なぜなら前回の話でも、亜樹子の淹れた紅茶の味について特に責めようともしなかったからだ。あの紅茶は美味ではなかったはずだ。なぜなら紅茶の味が普段とは違うことの理由を彼が尋ねたとき、メイド長の杉下(川俣しのぶ)は怯えていたからだ。今回も、亜樹子の云った「サプライズ」の中身が犯人探しであって菓子ではなかったことを知って彼はガッカリしていたが、出てきた菓子の不味さを責めようとはしていなかった。
園咲霧彦の面白さについては、インターネット上の至るところで話題沸騰のことと推察する。妻の園咲冴子(生井亜実)との共闘にも話題性があるが、園咲邸内の使用人まで全員集合しての喫茶会において楽しそうな様子だったことも記憶されてよい。冴子が、霧彦の現状に不満を抱いてはいても、愛を抱かなくなったわけではないことも正確に読み解かれるべきだ。その上で個室内の浴室における霧彦の全裸の後姿の圧倒的な美しさを観照するに如くはない。全裸の後姿を見る限り彼は仮面ライダーWに瓜二つ。