傍聴マニア09第五話

日本テレビ系。ドラマ「傍聴マニア09」。第五話。
原作:松橋犬輔北尾トロ。脚本:山岡真介。演出:仁木啓介。
今回は裁判一件のみの傍聴。だが、その殺人未遂事件における被告人がその罪を犯すまでは負けることを知らぬ優等生だったという事実から、人生における「勝敗」に対する考え方をめぐり、北森夫(向井理)と山野鳥夫(六角精児)との違いが表面化し、延いては山野の意外な過去も明らかになった。山野は幼時には「練馬の聖徳太子」と称され、司法試験を十年間も受験し続けた優等生だったのだ。
もっとも、北と山野の喧嘩を惹き起こした要素としてはもう一つ、恋に関する考え方の違いもあった。山野は「本気で人を愛したことのないおまえには解んないだろうな」と云って北を批判したが、この言には肯ける。山野にどれだけの恋愛経験があるのかは不明だが、北に殆ど恋愛経験がないだろうことは前回の第四話から想像できる。長身の爽やかな美男子である北が現在あの傍聴トリオの他には友も恋人もなく何時でも一人で行動しているのは、彼が煩わしい人間関係を嫌って自由と孤独を愛する人物であるからに他ならない。とはいえ喫茶店「オシラス」における北と山野の口喧嘩を見ていると、山野から同情を寄せられる被告人に北が激しく嫉妬し、要するに北が本気で山野を愛しているようにさえ見えてしまった。
北は山野の怒りを静めるため喫茶店「オシラス」で珈琲とピザトーストを御馳走した。ピザトーストを食う山野の脇で、北は殆ど空になった自身の財布の中を見詰めながら「今日、晩飯抜きだな」の侘しい一言。このドラマにおいて向井理が表現する寂しさと侘しさは、様々な犯罪を取り上げるこのドラマに叙情性を添えている。