アンタッチャブル第六話

テレビ朝日系。ドラマ「アンタッチャブル事件記者・鳴海遼子」。
脚本：橋本裕志。音楽：井筒昭雄。演出：常廣丈太。第六話。
鷹藤俊一（佐藤智仁）が何か裏のありそうな怪しげな人物として劇中に描かれる度合いは高まるばかりだが、ここ数話を通して時々散見される怪しさの表現の多くが特に根拠もなく意味ありげなだけのものである中、明確に怪しいと云えるものも時折ある。
今回、彼は、永倉栄一（寺島進）率いる日本福祉募金振興会を疑惑の対象から外しかけていた鳴海遼子（仲間由紀恵）に対し、同会に対する疑惑の追及の手を緩めるべきではないことを訴えたほか、毒入りワインを差し出された際、それに口を付けなかったばかりか、それを飲もうとした鳴海遼子の手を制して飲ませないようにした。後者は、あたかもこれから生じる事件を予め知っていたかのようであり、前者は、日本福祉募金振興会に対する取材を鳴海遼子に継続させたい事情が何かあるかのようでもある。
もちろん同会が怪しいことは明白ではあるが、もともと彼が疑惑の追及には必ずしも熱心ではなかったことを想起するなら、この熱意の上昇には何か裏がありはしないかと思えてしまう。しかし裏がないことの証拠とも取れる。
警視庁公安部刑事の鳴海洸至（小澤征悦）は日本福祉募金振興会の疑惑の追及にかける鷹藤俊一のこの熱意を鬱陶しく感じている様子であると見受けるが、このことは何を物語るのか。鷹藤俊一が疑わしいのか。それとも彼を煙たがる鳴海洸至こそが疑わしいのか。関連して云えば、一流週刊誌「国民ジャーナル」記者の遠山史朗（要潤）も鷹藤俊一を疑っている様子であると見受けるが、このことも視聴者にとって両義的だ。真に疑われるべきは何れであるのか。
遠山史朗が日本福祉募金振興会との間に繋がりを有していることが判明した。彼の父の遠山一郎（深水三章）が熱心な会員だったのだ。これまでの彼の情報源も彼の父だったのかもしれない。だが、このことは彼が日本福祉募金振興会の手先であることを証明するわけではない。鳴海洸至の部下の片山保（辻谷嘉真）が遠山史朗に疑惑の目を向け、換言すれば上司の妹の鳴海遼子の疑惑の目を遠山史朗に向けさせようとしていること自体が、視聴者にとっては両義的だと云わなければならない。
三流週刊誌「アンタッチャブル」編集長の樫村秀昭（田中哲司）は闇組織に屈服し利用されてはいたが、闇組織に属してはいなかった。そして記者としての信念に殉じた。今後は仲間と鍋祭でもして楽しく過ごすことだろう。