アンタッチャブル第八話

テレビ朝日系。ドラマ「アンタッチャブル事件記者・鳴海遼子」。
脚本:橋本裕志。音楽:井筒昭雄。演出:常廣丈太。第八話。
このところ数話にわたって、いかにも怪しげな人物として描かれてきた鷹藤俊一(佐藤智仁)の怪しさが今宵ついに最高潮に達した感があるが、彼を怪しく見せる数々の事象の多くは必ずしも弁明できない性質のものではないように思われるし、何よりも、彼の幼少期の屈折が日本福祉募金振興会の永倉栄一(寺島進)の幼少期の屈折によく似ているという話は、何となく決定的であるかのように見える反面、いくら何でも出来過ぎている。
鷹藤俊一は、既に疑いの晴れたはずの遠山史朗(要潤)を今なお疑っている。鷹藤俊一と遠山史朗からそれぞれの説を突き付けられては、両者をともに信じたい鳴海遼子(仲間由紀恵)は混乱せざるを得ないが、さらに追い討ちをかけるかのように鳴海洸至(小澤征悦)が、鷹藤俊一の疑わしさを力説しつつ、どうやら遠山史朗に対する疑念も消えたわけではないらしいことを表してもいる。
だが、鳴海洸至が妹の遼子に語り聞かせる鷹藤俊一の過去に関する話が全て真実であるかどうか、実はそれさえも定かではない。そもそも吾等視聴者から見れば最も怪しいのは警視庁公安部刑事の鳴海洸至と部下の片山保(辻谷嘉真)に他ならないが、劇中で彼等が疑われたことは一度もない。なぜなら彼等は、疑わしい人物を調べて逮捕する側にこそあれ、疑われる側にはないからだろう。だが、両名が潔白ではないことは固より明白だった。
鷹藤俊一が鳴海遼子の眼前であるにもかかわらず片山保を殺害したのは、片山保の犯罪を目撃してその秘密を見抜いた所為で殺されかかっていたからであるとしか思えない。一言でいえば正当防衛ということだろうが、闇組織の秘密を知り過ぎた者たちが多く殺害されてきたのをこれまで目撃してきた鷹藤俊一にとって、片山保から追われることの恐ろしさは絶大だったに相違ない。殺される前に殺す以外に選択肢があるはずもない。