サムライ・ハイスクール第九話=最終回
日本テレビ系。土曜ドラマ「サムライ・ハイスクール」。第九話=最終回。
脚本:井上由美子。企画協力:山口雅俊。演出:佐藤東弥。
東雲歴史文庫は望月小太郎(三浦春馬)の眼前にのみ出現していた幻影。彼の先祖にあたる安土桃山時代の望月小太郎(三浦春馬)の魂を彼の身体に宿した云わばサムライ高校生の望月小太郎を正しく導くための、管制塔となるべく出現していたのだ。喫茶店として活用されていた古い洋館に宿を借りて。そして文庫の番人だった綿貫ひみこ(ミムラ)は、実はその喫茶店に飾られていた不気味な人形だった。否、ことによると、安土桃山時代の望月小太郎の許婚だった女の魂が、その人形の身体に宿を借りていたのではないだろうか。夫となるべき望月小太郎と、その遠い子孫にあたる望月小太郎を見守り、正しく導くために。なぜなら先祖の精神を継いで義を貫くべく行動を起こした現代の高校生の望月小太郎を見送ったあと文庫の番人ひみこが、何時になく正しい言葉遣いで真剣に呟いた「本懐、御遂げ下さいませ」は、四百年前の、合戦へ赴く日の前夜の望月小太郎に許婚が云った「本懐、御遂げ下さいませ」と重なるからだ。
このドラマが一つ描いた希望は、愚かな岩永仁(賀来賢人)が、父親の岩永代議士(石黒賢)よりは健全な倫理観を持ち合わせていたということだろう。今宵のTBS系「情報7days」では現今の高校生の間で和太鼓が盛んであることが報じられていたが、思えば、現在の老人たちが古来の倫理や文化を徹底的に破壊し尽くそうとした戦後の若者たちだったとすれば、現在の若者はもっと率直に、古めかしいものだろうと何だろうと善美なものを受け容れ得るのかもしれないわけで、換言すれば、現在の日本においては、老人が古来の価値に繋がっていてそれを若者に伝授する通常の社会とは正反対に、老人は古来の善美に繋がりを持たず、逆に若者がそれを新たに甦らせ得るのかもしれないのだ。本作品の主旨はそこにあるのだろうか。