NHKとめはね第五話

NHKドラマ8とめはねっ!鈴里高校書道部」。第五話。
勅使河原亮(中村倫也)が望月結希(朝倉あき)に対して放った「望月さんは自分の気持ちにも鈍感なんだね」という一言は、大江縁(池松壮亮)と望月結希の二人を注意深く見詰めてきた彼ならではの洞察をよく示している。
確かに、大江縁と望月結希は、どう見ても相思相愛の似合いの二人だろう。勅使河原亮は多分、大江縁を相手にしてはとても勝ち目がないかもしれない…と思いつつも、かつて望月結希が自分に対して放った思わせ振りな言に一縷の希望を託して、敢えて当って砕けるつもりで思い切って告白してみたのだろう。だが、望月結希のあの思わせ振りな言は、本当に思わせ振りなだけのものだった。その言を相手がどのように受け取り、どのような感情を抱く可能性があるのかという点について、余りにも「鈍感」だったのだ。ここから彼は瞬時に、大江縁の心の傷にまで想像を及ぼし得た。彼の見るところ大江縁が望月結希に恋心を抱いているのは大江縁本人がどんなに否定しようとも明らかであるのに、大江縁と何時も一緒にいるはずの望月結希はそのことに気付いていないのではないのか?という可能性を感じ取ったのだ。あんなにも相思相愛のように見える二人であるのに、二人の内の一人がそのことに気付いていないなんて。当然、勅使河原亮は、今や友でもある大江縁の悲しみを想像したに相違ない。あの、いかにも寂しげな、捨てられた小犬のような眼差しを。だが、あの二人を見詰めてきた彼ならではの洞察はそこからさらに進んで、「望月さんは自分の気持ちにも鈍感」というところをも見落とさない。望月結希が大江縁の想いに気付かないのは、大江縁に対する自身の想いにさえも気付いていないからではないのか?と。
それだけ勅使河原亮は彼等を似合いの二人だと認識していて、嫉妬しつつも実は内心どこか祝福し、応援してもいて、だからこそ逆に、告白を急がなければ大江縁にはとても勝てそうもないかもしれないと思ったのではないだろうか。今宵までの五話を通して、断片的ながらもなかなか印象深く描かれてきたと云える勅使河原亮の姿と行動と思いは、今宵のあの一言に、そうした濃密なドラマを凝縮し得た。