第十四回ブラタモリ赤坂

NHK総合ブラタモリ」。第十四回「赤坂」。旧東宮御所こと迎賓館の貴賓室から、紀州徳川家の江戸藩邸の庭園を眺め、高級料亭で芸妓の舞を見る…というのは、流石に流浪の番組タモリ倶楽部」では到底真似できない企画ではある。でも、この番組の妙味は、坂道美学者タモリ先生が街の中を歩きながら、その現代都市の只中に唐突に出現する小さな異物(例えば目的の不明な石組)に眼を留め、それを旧時代の微かな名残(例えば江戸城の外堀の溜池の石垣)として認識し、過去の景観へ想像を回らせてゆくところにこそある。ギリシア考古学者の周藤芳幸名古屋大学教授は、著書において、発掘を伴わない新たな考古学上の方法としてのフィールド踏査が発掘を補い得る成果を上げてきていることを述べているが、この番組におけるタモリの探査は、もちろん地中海考古学者の調査団のフィールド踏査のような綿密なものではあり得ないにせよ、愛好家流の、発掘を伴わない考古学のようなものであるとは云えないだろうか。

タモリのTOKYO坂道美学入門 古代ギリシア 地中海への展開―諸文明の起源〈7〉 (学術選書)