仮面ライダーW(ダブル)第二十七話

東映仮面ライダーW(ダブル)」。
第二十七話「Dが見ていた/透明マジカルレディ」。
脚本:三条陸。監督:坂本浩一
左翔太郎(桐山漣)は、照井竜(木ノ本嶺浩)が仇討への執念で暴走し始めたのを止めようとしながらも、同時に、その感情に理解を示してもいたとき、フィリップ(菅田将暉)は翔太郎までもが暴走し始めかねないことを予感して、こういうときこそ冷静であるべきことを訴えたが、この忠告に対して翔太郎は一度は「うるせえな、おまえは俺のオフクロか?」と反発した。
無論この直後に、翔太郎がフィリップ以外に相棒はいないことを改めて確かめ合う場面が来るわけだが、興味深いのは、翔太郎が初めて自身にとっての家族のような存在について語ったことだ。このドラマには今まで様々な家族が登場してきた。殆ど様々な家族を描くドラマであるとさえ云えなくもない。照井竜は家族の仇討のために生きているようなものであるし、フィリップは家族について記憶を喪失していて、家族について考えるや動揺せざるを得ないし、鳴海亜樹子(山本ひかる)は亡き父の跡を継ごうとしている。彼等の敵、秘密結社ミュージアムの園咲家の人々も、家族とはどうあるべきかを常に考えているようだ。そうした中で唯一、翔太郎には家族の気配がない。家族の気配を感じさせない点において彼は風都警察署や情報屋の面々と大差がないとさえ云える。主人公でありながら脇役と大差がないのだ。この点は、この物語における翔太郎という人物の特殊性を示しているようにも思える。彼が相棒フィリップの忠告を母の説教に喩えたことは、逆に、家族を描く物語の中心にありながら家族の物語を持たない唯一の人物であるという点における彼の特殊性を改めて突き付けてきた。
ところで、翔太郎が街と人々への愛着のゆえに暴走しがちであることは、これまでの物語において幾度も描かれてきた。それは彼の基本でさえあって、だからこそフィリップは「念のため」忠告しないわけにはゆかなかった。そして案の定、翔太郎は自身を犠牲にしてでも人々を助けようとした。自身の危険をも顧みることなく無謀な戦い方を選択しようとする翔太郎をフィリップが止めようとする場面が、今朝の話には二度もあった。フィリップの悲痛な叫び声が強烈に記憶に残る。
そもそも今回の事件の依頼人は、透明人間ドーパントとしての能力を制御できなくて困っている二代目魔術師(長澤奈央)であり、犯人の「ダブリュウのメモリの持ち主」こと井坂深紅郎(檀臣幸)も、ドーパントとしての自身の性能の拡大への欲求において「自分を抑えられない」。この変態こそ家族の仇に他ならぬと知った照井竜は仇討の志に駆られるとき「自分を抑えられない」。同じ頃、園咲若菜(飛鳥凛)も、井坂深紅郎の罠にかかり、ドーパントへの変身能力を膨張させられ、徐々に自分の身体を抑制できなくなってきていた。そして今回の話でこそ描かれなかったとはいえフィリップも元来、自身の好奇心と探究心を抑えることができないのだ。