ハンチョウ第二話

TBS系。パナソニックドラマシアター「ハンチョウ 神南署安積班」。第三部第二話「ネグレクト…3人の子を捨てた母の逃避行」。
偶然が幾つも重なって事件が発生して複雑化して、さらに偶然が重なって謎は解けて事件は解決した。しかし中学三年生の長男と病弱の長女と幼い次男の三人の子を捨てて逃避した母に、長男が謝るという構図は、そもそも長男が母の罪を責めたからこそ逃避行が生じたのだと踏まえれば理解できなくはないとはいえ、極めて理不尽ではある。あの余りにも若い長男が中学校に通いながらも新聞配達をして金を稼いで妹と弟を養わなければならないでいることを考えるなら、滅多に家に戻ることもない母を彼が罵倒したとしても、そのことを責めるわけにはゆかない。
この健気な長男、染谷広海を演じていたのが菊池風磨。役は中学三年生だが、本人も高校一年生。神南署刑事課強行犯係の刑事、黒木和也巡査(賀集利樹)に対しては反抗的な態度と口調を続けていた広海も、妹の美海(近藤里沙)や弟の拓海(猪野竜平)と三人で遊んでいるときは無邪気な顔をしていた。父も母もいた幸福な五人家族だった時代にも同じ顔をしていた。彼が自宅内の冷蔵庫の中を何度も確認した上で買物へ出かけたのは、乏しい資金で必死に遣り繰りをしているのだろうことを感じさせた。そして、妹の運び込まれた病院の庭で、強行犯係長の安積剛志警部補(佐々木蔵之介)から母(渡辺典子)の逃避行に関する真相を聞かされたときの何かを静かに理解し得たような顔は美しかった。
菊池風磨テレヴィドラマに出演するのは、二〇〇八年十月から十二月にかけて放送された土曜ドラマ「スクラップ・ティーチャー」、二〇〇九年一月三十一日に放送された特別番組「SMAPがんばります!!」におけるSMAP少年時代の再現ドラマに続いて三回目だろう。これまではB.I.Shadowの一員として中島健人等と一緒の出演だったから、特撮ヒーローこそ多くいるもののアイドルは一人もいない現場での今回の仕事は貴重な経験になったろう。