仮面ライダーW第四十四話
東映「仮面ライダーW(ダブル)」。
第四十四話「Oの連鎖/シュラウドの告白」。
脚本:長谷川圭一。監督:坂本浩一。
左翔太郎(桐山漣)は老化ドーパント相馬卓(小豆畑雅一)の攻撃を受けて老人の姿に変えられた。そんな翔太郎翁(名取幸政)が、同じく老化させられた少女たちの悲しみを想い、卑劣な老化ドーパントを懲らしめるべく杖を振り回して立ち向かった果敢な姿は見ものだったが、見落としてはならないのは、翔太郎を老化させた黒幕が謎の女シュラウド(声:幸田直子)に他ならないことだ。
今回、己のこれまでの企みについて正直に告白したシュラウドこと園咲文音は、その影響で家族を失った照井竜(木ノ本嶺浩)に対して「ごめんなさい」と謝罪した。あの威厳のある声と口調で「ごめんなさい」と云ったところが妙に面白かったが、同時に、翔太郎に対しても少しは謝罪した方がよいのではないのか?と思わなくもなかった。
ともかくも新たに判明したことをまとめよう。(一)シュラウドこと園咲文音は、風都に拠点を置く秘密結社ミュージアム園咲家の総帥、「恐怖の帝王」こと園咲琉兵衛(寺田農)の妻であり、長女の園咲冴子(生井亜実)をはじめとする三人の子に恵まれて幸福な家庭を営んでいた。(二)しかるに、やがて園咲琉兵衛は、長男であり末子である幼少の園咲來人(橋本智哉)を「もう、普通の子どもではない」「地球の子」と呼び、ミュージアムの目的を達成するための「道具」のように用いようとし始めた。(三)來人の母として園咲文音がこれに強く反抗し、「返して!」と縋り付いたのに対して、園咲琉兵衛は「文音、おまえにもう用はない」と冷たく宣告した。(四)愛する子を失い、幸福な家庭をも失った園咲文音は、夫ばかりか他の二人の娘をも捨て、一人で家を出た。(五)園咲文音は何時か來人(菅田将暉)を奪還するとともに園咲琉兵衛に復讐すべく、顔を包帯で巻いて隠し、黒尽くめの衣装に身を包んで、憎しみの狂女シュラウドと化した。
以上のことから、あの「ビギンズナイト」事件の依頼人がシュラウドだったことは今や明白だろう。あの事件の夜、鳴海荘吉(吉川晃司)が園咲冴子の攻撃に倒れたこともシュラウドにとっては深刻に甚大な番狂わせだったろうことも推察されよう。翔太郎が來人=フィリップの相棒となることもシュラウドには予想できていなかった事態だろう。翔太郎が照井竜のようには特別な能力の持ち主ではないという点に加えて、「ビギンズナイト」の予想外の偶発の展開でフィリップの相棒に選ばれたに過ぎないという点において、翔太郎に対するシュラウドの嫌悪感が増幅された面もあったろう。神であろうとする者は偶然に左右されることを嫌うからだ。