新番組=橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり第十部第一話

今宵からの新番組。
TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田壽賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
最終部=第十部第一話。
森光子が演技できない状態になっていたことを目の当たりにして衝撃を受けたのは今から二年前、二〇〇八年のこの時期の、このドラマでのことだったが、今宵のこの第一話では本間常子役の京唄子の現状に驚かされた。とはいえ極度に痩せていたのは病み上がりであることによるようで、森光子とは異なり、声は確りしていたし、演技をすることもできていて、長い台詞を云うこともできているようだ。
しかし劇中の本間常子(京唄子)は一気に凄まじく老いている。この急激な老化は神林清明愛川欽也)との死別によると説明された。
源氏物語の宇治十帖が六条院=源氏君の逝去後の世界を描くのにも似て、今宵から始まった「渡る世間は鬼ばかり」は、云わば神林清明逝去後の世界を描くところから始まったのだ。
小島家ラーメン店「幸楽」に、海外赴任先の印度から人事異動で無事帰朝した直後の金田典介(佐藤B作)が訪ねてきて、呑気に小島勇(角野卓造)等とともにバンド活動を再開しようとしていたとき、本間長子(藤田朋子)と本間英作(植草克秀)の家族が本間常子の介護をしながら居住している神林清明の旧宅には、神林清明の全財産の唯一の正統な相続人である子息の神林守弘(山口良一)が出現して、本間一家に対して冷酷に(しかし当然の権利に基づいて)退去を要求していた。佐藤B作と山口良一とのこのような鋭い対比は今宵の一つの見所だったと云えるかもしれない。
物語の設定が何時しか強引に変更されてしまうのは毎度のことだが、今宵の話で最も意表を突いたのは、血縁の繋がらない家族が寄り合って同居する生活の素晴らしさをかつてあんなにも謳歌していたはずの野田弥生(長山藍子)が、今や血縁なんか無に等しくなっている野田佐枝(馬渕英俚可)とその子への嫌悪感を、もはや隠そうともしなくなっていること。このドラマには鬼のような非道の人物が幾人かは必要だが、今回はその役を野田弥生と本間常子が引き受けるのだろうか。