神木隆之介SPEC第二話
TBS系。金曜ドラマ「SPEC(スペック) 警視庁公安部公安第五課未詳事件特別対策係事件簿」。第二話。
面白かったところは大小様々幾つもあったが、小さなものを一つ挙げれば、当麻紗綾(戸田恵梨香)が板野貞雄(斎藤工)の背中に鼻を近付けて「良い匂い」と評したところ。二重の意味を具えて面白かった。それは野々村光太郎(竜雷太)率いる警視庁公安部公安第五課未詳事件特別対策係の三人組が板野貞雄の工房を最初に訪ねた際のこと。三人組の前に現れた板野貞雄は、気取ってはいるものの爽やかな美男子で、白いシャツは身体の引き締まった逞しさを感じさせて、文字通り匂やかな麗しさに満ちていた。その官能的な華やかさを当麻紗綾は「マイケル!」と形容し、「良い男」とも評してみせたのだろうが、「良い匂い」という語はそこから一転、犯罪の気配を感じていることの表現だったのが明白だ。その直前の場面において当麻紗綾が十年前の事件の現場に鮮やかに残されていた血痕を「かぐわしい」と述べていたことから、そのように類推することができる。板野貞雄の美しさや色気に酔い痴れているかのように見えて実際にはむしろ、彼の隠していても隠し切れない犯人の「匂い」にこそ興奮していたと解される。
誰よりも不気味な雰囲気を漂わせていた大島優一(佐野史郎)の出番はあれだけなのか?本当にあれで終わりなのか?とか、松井和生(岡田義徳)が鬼門真理子(森脇英理子)を殺害することの確実性とその事件発生の時刻を桂小次郎(山内圭哉)はどのようにして一日前から予言し得たのか?とか、疑問点もなくはなかったが、最後の、時間を止められた世界に威厳を湛えながら颯爽と姿を現した一十一[ニノマエジュウイチ](神木隆之介)の、透明感ある美しい顔に浮かべた無邪気にも冷酷な笑みの、圧倒的な魅力と怖さは、あらゆる疑問を無力化する程だった。