仮面ライダーオーズ第十話

東映仮面ライダーオーズ/OOO」。
第十話「拳と実験と超バイク」。
前回(二週間前)の話を構成した三つの出来事は、(一)「爆弾に憑りつかれた男の欲望から、メズールのヤミーが誕生」、(二)「オーズはアンクの制止を無視してラトラーターのコンボを発動」、そして(三)「映司たちの前に、メダルシステムを開発した真木が現れた」。
変身後の仮面ライダーオーズ以上に、変身前の火野映司(渡部秀)の生身のままの活躍が圧倒的に恰好よかった。「爆弾に憑りつかれた男」から黒革の手帖を奪い取った彼は、遊園地に七つもの爆弾が仕掛けられていることをその記載内容によって知り、犠牲者を一人も出さないようにするため、急いで現場へ駆け、なるべく来園者たちを避難させた上で、手帖に記された爆弾の設置場所を急いで駆け廻り、全ての危険を除去し、爆破事件を完全に防ぐことに成功した。七つ目の爆弾を取り除き得た直後の、なかなか震えの止まらない彼の手と腕は、一人たりとも犠牲者を出したくはないという彼の思いの強さだけではなく、彼自身も決して怖くなかったわけではないだろうことをも強く感じさせた。
この怒りと恐怖で最高度に興奮した状態にあった彼は、鴻上生体研究所に乗り込み、「爆弾に憑りつかれた男」を野放しにしていた同研究所長の真木清人神尾佑)を呼び止め、彼の顔を殴る代わりに彼の顔の真横にあった鉄板を殴った。殴られた鉄板はその余りにも強い力によって完全に変形した。あの瞬間における火野映司の、何時にない感情の激しさ、怒りの強さをよく物語っていた。実際、その勢いに怯えて真木清人は腰を抜かしていた(厳密に云えば、勢いに圧倒されて、何時も肩の上に載せている謎の人形を落としてしまい、それと同時に腰を抜かしたようだった)。
それでも、彼は決して真木清人自身を殴ろうとしたわけでもなければ罵ったわけでもなく、むしろあくまでも丁重に、真木清人の発言に対する不快感を告げただけだった。メダルシステムの「研究」のためには他人の人生を犠牲にしてもよいと真木清人は考えているが、火野映司はそれを許せない考え方だと思い、聞きたくもないと感じている。でも、それでもなお彼は、そのような恐ろしい考えを抱く真木清人その人を否定し去るのではなく、拒否感のみを表明した。そして現実の行動としてはそのような不埒な考えに基づく全ての事件を阻止したいと決意したのだろう。
鴻上財団の隊長、後藤慎太郎(君嶋麻耶)も色々な顔を見せた。
鴻上財団の本部にある鴻上光生(宇梶剛士)の執務室で、彼と真木清人との間のテレヴィ電話を通じた遣り取りを聞いていた後藤慎太郎は、メダルシステムの能力を実験して発揮してゆくための媒体として「人間」もあり得るという話が出たときには少々期待したような表情を浮かべていたが、結局、仮面ライダーオーズこそが適任であるとの結論で合意が形成されたときには失望と嫉妬の混じったような顔をしていた。
その後、偶々訪れた鴻上生体研究所の内部でヤミーが大量に発生する異常事態を目の当たりにした後藤慎太郎は、驚き慌てながらも武器を構えてヤミーたちを少しでも退けながら急ぎ中央監視室へ駆け込み、そこの機械を確認のうえ操作して避難経路を確保し、研究所内に閉じ込められた所員たちに避難を促していた。仮面ライダーオーズのような戦闘力を与えられているわけでもない「人間」後藤慎太郎にとって、選択し得る最善の対応策だったに違いない。世界平和のために前線に立ちたいという彼の志が伊達ではないことを確信させ得るだけの、見事な活躍振りだったと云えるだろう。