日めくりタイムトラベル昭和三十三年の月光仮面

NHK衛星第二日めくりタイムトラベル」昭和三十三年編を途中から所々見た。見始めたところからは録画も始めたので、見直すことはできる。
興味深かったのは(ゆえに録画せずにはいられなくなったのは)同年にテレヴィ放映された「月光仮面」に関する特集。リポーターをつとめたのはイラストレイターみうらじゅん。「月光仮面」の作者である川内康範は東北の寺の四男として生まれた仏教徒であり、少年たちのための「正義の味方」である月光仮面薬師如来の脇侍である月光菩薩を典拠として構想され、ゆえに正義そのものではなく、むしろ薬師如来の説く正義を実現するための「助人」であることに徹していた。「正義の味方」とはそのような意味の語だったのだ。今思えば、森進一が芸術家の権利を侵害するドクロ仮面だったとすれば、それを批判して悔い改めさせようとした川内康範は芸術家の権利という正義の実現のために助力した月光仮面その人に他ならなかったのだろう。
あの歌の詞が、少年時代の川内康範仏教の思想を行動で示し教えた母への思いを基礎としつつも、それをもっと普遍化して、解り易く表現してみせた作品だったと考えてよければ、それを勝手に一歌手の私的な事情や感情に矮小化して無断で書き換え、改悪し、表現の質を低下させてしまうことが許し難い暴挙であるのは容易に理解できる。