SPEC第十話=最終回

TBS系。金曜ドラマ「SPEC(スペック) 警視庁公安部公安第五課未詳事件特別対策係事件簿」。第十話=最終回。
病院で息を引き取った一十一[ニノマエジュウイチ](神木隆之介)に向かい、合掌していた野々村光太郎(竜雷太)は、果たして何を見て驚き、怯え、狼狽していたのだろうか。それに先立つ一十一の臨終の瞬間の直前、その瞬間を待望していた地居聖(城田優)の姿に気付いたからか、瀕死の一十一は微かに目を開け、包帯の下で指を動かそうとしていた。これも謎だ。
他人の記憶を改竄する「SPEC」の所有者である地居聖の正体は、意外にも津田助広(椎名桔平)だったが、まるで一十一のような「SPEC」を用いて彼を倒したのは、果たして蘇生した一十一だったのか、それとも一十一こと当麻陽太の実の姉である当麻紗綾(戸田恵梨香)だったのか、やはり最後に登場した別の津田助広だったのか。
野々村光太郎のあの驚きは、まさか一十一が津田助広にでも変容したのを目の当たりにでもしたのだろうか。
今宵の冒頭の、非合法の非常手段を用いて一十一に致命傷を与えた当麻紗綾が一十一の耳の裏の痣に気付いてそれが己の実の弟に他ならなかったことを知って、抱き締めるようにして彼の手に触れたとき、瀕死の一十一もまた、うなされるように「ねえちゃん、ねえちゃん…」と呟いたのは、当麻紗綾の手の感触で遠い過去の、消された記憶を呼び戻したのだろうか。そうだとすれば、それは既に、消された記憶を五感を通して呼び戻した瀬文焚流(加瀬亮)の復活を予告するものに他ならなかったと判る。
最終話の最後に至ってもなお新たな要素が続出し、よく解らないことだらけの最終話で、とても最終話とは思えない程に支離滅裂だったが、全十話の全体として面白かったと思う。