ドラマ生まれる。第七話
TBS系。金曜ドラマ「生まれる。」第七話。
林田家の次男の林田浩二(中島健人)は、五年前に治った白血病が再発して入院したが、この事実を家族に伏せていた。
五年前に彼が救われたのは、母の林田愛子(田中美佐子)から骨髄を移植されたおかげだったが、今、身重の母から骨髄を移植することになれば、母の身ごもっている子に深刻な負担をかけ、死なせるかもしれない。それでも母は彼の病の再発のことを知れば必ずや彼を助けたいと思うだろう。彼はそれを恐れて、母には再発のことを知られたくなかったのだ。
暫く家を留守にしてしまう理由については彼は、かねて夢見ていた映画の仕事に関して好機が訪れたのを逃したくないので暫く海外へ渡航する…と嘘をついたのだ。ところが、姉の林田愛美(堀北真希)は雑誌の編集者として取材のため偶々彼の入院中の病院へ訪れていたとき、廊下で偶々彼の姿を見出し、詰問して真相を知った。
林田浩二が嘘をついたのは身重の母を悩ませたくなかったからだが、姉の林田愛美に詰問されて嘘をつき通せなくなったのも、姉を悩ませたくなかったからだろう。
林田愛美が、職場における尊敬する上司である国木美和(戸田恵子)が「後悔しないように生きたい」と語ったのを聞いて閃き、思案の末についに決意するに至ったところは、このドラマに稀な煌めく展開だったかもしれない。
林田浩二の病の再発のことを知れば、林田愛子は大いに苦悩するだろう。だが、選択の余地があることはそれがないことよりも望ましいのではないか。もし五年前と同じように彼に適合するドナーが実母の林田愛子のほかには見つからなかったなら、しかもそれにもかかわらず彼の再発のことが林田愛子に最後まで知らされなかったなら、林田愛子は彼の死という結果だけを唐突に突き付けられることになるだろう。これでは余りにも救いがない。覆しようもない結果だけを突き付けられて、死ぬまで後悔するほかない人生よりも、厳しい選択を迫られて苦悩しながらも、自ら決断して責任を引き受けることのできる人生の方が望ましいはずだ。林田愛美はそのように考えて、母に真相を伝えることを決め、予め弟にそのことを告げた。
この展開には何時になくドラマティクな説得力があった。長男の林田太一(大倉忠義)が陥っている不幸な状況は何から何まで不条理で、そこへ至る展開には説得力の欠片もないが、それとは極めて対照的だったと云える。