高校生レストラン第五話
日本テレビ系。土曜ドラマ「高校生レストラン」第五話。
相河高等学校調理クラブの教育施設「高校生レストラン」で活動している大勢の高校生たち以上に、料理人の村木新吾(松岡昌宏)と相河町農林商工課の岸野宏(伊藤英明)の二人が最も青春ドラマを演じているこのドラマで、珍しく生徒の一人、高校三年生の坂本陽介(神木隆之介)がその青春ドラマに加わった。
でも、その加わり方がなかなか絶妙だった。高校生の坂本陽介が今、色々悩みながらも早くも自身の道を、自身の居場所を見付け出しているのかもしれないのに対し、村木新吾は、坂本陽介と同じく高校生だったときには未だ自身の道を見出せず、ただ家業の寺からは逃れたくて、それだけのために東京へ出て大学へ進み、それでも自身の居場所を見付けられなかった中で偶然、料理の道に出会って、一流の料亭で修業を積んで、そうして今、漸く郷里へ帰ることを得た。かつて悩める若者だった村木新吾は、料理の技と心にかけては一流でも、生き方に関しては決して自信があるわけでもなく、ゆえに大人になった今でも少年時代の悩み多い感情を忘れることができなくて、時折、悩める若者そのものに戻ってしまう。料理人を志して勉強している坂本陽介にとって村木新吾は尊敬できる師だが、悩める若者に戻った師は、彼と同年代の友のようでもあった。
ところで、吉崎文香(板谷由夏)が調理師免許を取得することを、村木新吾が当然あって然るべきであると考えていた理由は、この生徒にも教師にも役場にも厳しい教諭が三重県立相河高等学校の「調理科」の教務主任に他ならないからだろうか。なぜ吉崎文香が調理師免許を取らないのかの理由をめぐる当人と村木新吾との遣り取り自体は面白かったが、高等学校の調理科における授業の風景がこれまでの劇中にはなかったように思われるし、無論この教諭が調理に携わる場面を見た記憶もないので、吉崎文香が調理科の教諭であるということに思い到るには時間を要した。