渡る世間は鬼ばかり第十部第三十二話

TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田壽賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
最終部=第十部第三十二話。
小島家ラーメン店「幸楽」の元店主の小島勇(角野卓造)が東北の大震災に言及した。劇中、初のことだろう。被災地からの需めに応じ、彼の率いる「親父バンド」という名の親父バンドで避難所へ慰問に赴くことに決したとのことだが、調理道具と材料一式をも携えて行き、「幸楽」の温かいラーメンや餃子をも届けるという発想はあるかどうか。劇中のインターネット界では「親父バンド」と「幸楽」の餃子は完全に結び付き、一体のものとして評判になっているのである以上、そのような配慮は不可欠ではないかと思われる。もちろん劇中だけのフィクションとしてそれをやっても意味がない。実際に福島や東北へ慰問に行ってもらいたい。
さて、今回は幾つか小さな事件があった。
例えば(1)野田弥生(長山藍子)の家では、野田佐枝(馬渕英俚可)が再び不審な行動を取り始めた。最近、インターネットに夢中になる余り、家事を疎かにしていたらしいが、この日、ついに無断で家を留守にしてしまった模様。どこで何をしているのだろうか。他方、小島家では(2)長谷部力矢(丹羽貞仁)が小島家ラーメン店「幸楽」へ初めて出現した。未だ脚の怪我の癒えない小島眞(えなりかずき)を送り届けただけだが、存在感を誇示した。同じく小島家では(3)田口愛(吉村涼)の非常識の暴論を田島聖子(中島唱子)がたしなめるという事件もあった。もう一つ忘れてはならないのは、岡倉家の(4)本間日向子(大谷玲凪)が祖父の岡倉大吉(宇津井健)が営んでいる高級料理店「おかくら」の厨房で、森山壮太(長谷川純[ジャニーズJr.])に師事して料理人を目指すことを、父の本間英作(植草克秀)が許したこと。
何れも注意に値するとはいえ小さな事件ではあって、全体として今宵の話には実質的な進展はなかったと見てよいだろう。
そうした中で今後の展開を最も大きく左右し得る大事件は、かねて小島眞に偽装の恋人を演じさせてきた長谷部まひる(西原亜希)が、偽装ではなく本当の恋人同士になってみないか?と申し出たことだ。長谷部まひるが小島眞を気に入っていることの気配は既にこれまでにも盛んに描かれてきたが、今回ついに、長谷部まひるの好意が本気であることは確定したのだ。
かつて小島眞の婚約者だった大井貴子(清水由紀)と、小島眞の親友として大井貴子の父の世話をする森山壮太との間には、今や互いに恋愛感情があるのではないのか?否、あるに相違ない!との仮説を長谷部まひるが小島眞相手に執拗に強調して信じ込ませようとしているのは、恋敵の大井貴子を小島眞から遠ざけたいからだろう。