渡る世間は鬼ばかり第十部第三十三話

TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田壽賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
最終部=第十部第三十三話。
ここ暫くの間は小島家ラーメン店「幸楽」と高級料理店「おかくら」を中心に話が展開してきたが、今宵は実に久し振りに、野田弥生(長山藍子)の家で事件が発生した。野田夫妻とは血縁関係が事実上ないに等しいにもかかわらず今や家族として扱われている野田佐枝(馬渕英俚可)が一晩の家出をしたのだ。
野田良(前田吟)の下で庭師として働く竹下美雨(京野ことみ)に発見されて連れ戻されて帰宅することを得た野田佐枝は、義母の野田弥生にだけは真相の全てを告白した。それによると、家族の皆が仕事や学校へ出かけている間、何時も何時も一人で留守番をしている内に次第に募った孤独感や欲求不満感に耐えかねて、携帯電話のインターネット上のブログやツイッターで色々不満や苦悩を書き連ねていたところ、一人の中年紳士から興味と好意を寄せられ、言葉だけの遣り取りでは大いに話が合い、ついに実際に喫茶店で会ってみたところ、本性を現したその相手は、定期的に金で体の関係を持つ契約を締結してはみないかとの案を提起してきて、これには流石の野田佐枝も憤り、悔しくなり、情けなくなって、家族に合わせる顔もないと感じて家出を考えてしまっていたらしい。
家出をしたところで行く先もなく生きる術もなかったわけだから、連れ戻されて、帰宅して、家族の皆に歓迎され、心配され励まされて、全て真相を明かしてもなお野田弥生には全てを許され、むしろそこまで追い詰めてしまったのを申訳なく思うとまで謝られて、野田佐枝にとって結局、数時間の屈辱と罪悪感に切り苛まれた以外には何一つ失ったものもない出来事だった。
このような唐突な事件が発生したのは、多分、野田家の人々にも偶には出番を与えておかなければならないという脚本家の配慮によるのだろう。そう考える以外ない程に呆気ない解決だったが、次週からは再び小島家に舞台を戻し、激動が再開することだろう。待望するのみ。