ドン★キホーテ第四話

日本テレビ系。土曜ドラマドン★キホーテ」第四話。
京浜児童相談所の決して広くはない庭に、「NPO法人鯖の会」こと鮫島組の組長以下四名が的屋として屋台を連ね、子どもたちのために数時間の盛大な祭を催した。この開催を発案したのは、京浜児童相談所児童福祉司の城田正孝(松田翔太)の姿をした鮫島組の組長の鯖島仁(高橋克実)。彼自身もオコノミヤキの屋台を開いて皆に振る舞った。
もともと京浜児童相談所では年に一度、夏のこの時期に手作りの夏祭を開催して子どもたちを喜ばせるのを恒例としてきたが、その内容について説明を受けた彼は、そんなものは「祭」とは呼べない!と呆れ果てた。地域の用心棒である鯖島組の組長は地域の祭事の元締であり、云わば専門家であるから、神輿もなければ的屋もなく何の盛り上がりもないような祭なんか「祭」とは認められないのだ。そこで彼は、鯖島仁の姿をした城田正孝を通じて鯖島組一同に命じて、かなり小規模ながらも本格的な祭を実現してみせた。神社ではないから流石に神輿は出なかったが、児童相談所の子どもたちを美味と娯楽で満腹にさせて、日常の孤独や貧困を忘れさせることのできた正真正銘の「祭」だった。
城田正孝の姿をした鯖島仁がこのような祭の実現を決意したのは、実は妻の鯖島あゆみ(内田有紀)を喜ばせるためだった。
このところ鯖島仁…の姿をした城田正孝は、京浜児童相談所の仕事を気にして鯖島組を留守にすることが多く、妻の鯖島あゆみに寂しい思いをさせることが多かった。鯖島あゆみは夫の愛が薄れてきているのではないかと心配していたが、そうした中、ついには彼が城田正孝の姿をした鯖島仁に誘われて夜の店で酔ってる現場を目撃してしまい、大いに機嫌を損ねてしまった。鯖島仁の姿をした城田正孝がどんなに謝っても、天の岩戸の如く座敷にこもり切って出てこようとはしなかった鯖島あゆみは、座敷を出てやるための条件として、一言、「アレを持ってきて」とは告げたが、「アレ」が何であるのかを鯖島組の誰も知らない。鯖島仁の姿をした城田正孝は、城田正孝の姿をした鯖島仁にそのことについて相談した。
そこで城田正孝の姿をした鯖島仁は、京浜児童相談所の皆の前で、今年の夏祭を一人で引き受けてやることを宣言して、あの盛大な祭を開催してみせた。彼自身も前夜には、屋台で大量のオコノミヤキを供するための下拵えに精を出す余り、徹夜までしていたが、実は鯖島あゆみの云った「アレ」とは、その、彼のオコノミヤキに他ならなかった。二人が出会ったのは十年前の夏の祭の夜、屋台を出していた彼がオコノミヤキを差し出したとき。オコノミヤキの美味と彼の明るさが二人を結び付けたのだ。
妻一人の機嫌を取るために敢えて盛大な祭を開催して、結果としてそれが大勢の子どもたちを喜ばせ、特に、父子家庭であることの苦労を強いられている森口真一(柏原収史)の子、四歳の森口唯(栗本有規)を笑顔にして、森口真一にも家庭生活の再建を決意させた。
城田正孝の姿をした鯖島仁の、余りにも私的な、殆ど身勝手でさえあるのかもしれない行動が、結果としては子どもを救い、多くの人々に幸福を与えるという点は前回と同じであると見えるかもしれない。だが、祭の前夜の彼がオコノミヤキの下拵えを森口唯にも手伝わせながら楽しそうにしていた様子を見るなら、彼が夏祭の開催を決定したとき、第一話で児童相談所に引き取られた孤独な見崎駿(黒澤宏貴)をはじめとする子どもたちを、全く思い浮かべてもいなかったとは信じ難い。
ところで、父子家庭が母子家庭に比して税制面等でも不利な条件にあることが劇中にさり気なく言及されていた。母子家庭に比して父子家庭を冷遇する制度が行われている現実は、差別主義的フェミニズムに基づく偏向した政治の結果であるのか知らないが、そうした男性蔑視の不公正な政策の結果として男女を問わず子どもたちの福祉が阻害されているとすれば、由々しき問題ではないだろうか。性差別主義者の欲を満たすことと子どもたちを守ることの何れが尊重されるべき政治課題であると云うのだろうか。