アイシテル-絆

日本テレビ系。ドラマ「アイシテル-絆」。
二〇〇九年四月から六月にかけて放映された日本テレビ水曜ドラマ「アイシテル-海容」全十話の続編。二〇〇九年六月十七日の最終回=第十話において、キヨタン殺害事件の加害者である野口智也(嘉数一星)には事件後に弟ができたことが描かれていたが、今宵の続編は智也の弟、直人を主人公にして、加害者の家族の人生を描いた。
このドラマについて論評することは難しい。なぜなら二年前の全十話を通して、加害者には同情の余地が充分あったのに対して被害者には同情の余地が乏しかったからだ。少年犯罪における加害者と被害者それぞれの家族、特に母親の苦しみを描くドラマであるとは解されるが、被害者の母ではなく加害者の母を主人公にしている以上、被害者の母よりも加害者の母が大きく、しかも同情的に取り上げられるのは当然だったかもしれない。だが、このドラマの場合、加害者の少年の心の美しさと、被害者の少年の心の醜さとが対比されてもいた。加害者の少年は被害者の少年に対して殺意どころか憎しみさえも全く抱いてはいなかったが、むしろ視聴者が被害者の少年を憎んでしまいかねないような描写だった。殺人というのは並大抵の行為ではないから、善良な少年がそれを犯すに至るにはそれなりの理由があって然るべきであり、このドラマはそれを描いてみせたのだろうが、あれでは下手すれば犯罪の美化だ。さらに厄介なことに、加害者になってしまった少年を演じた子役の嘉数一星が、獄中でも規律ある生活を続ける生真面目な少年の姿を、実に繊細に、健気に演じてみせて、視聴者を魅了せずにはいなかった。さらに厄介なことに、彼はあらゆる悪とは無縁であるとしか思えないような、透明感ある瞳を輝かせて清潔感と気品のある美少年だったのだ。あんなにも健気で美しい少年が、悪いことなんかするはずがない…と考えるのは人間の自然な感情だろう。これでは視聴者も皆、加害者の側を美化して見てしまうではないか。難しい問題を扱うドラマとしては随分と無防備な作風だったのだ。
ゆえに話の内容については語らないが、出演者については一言。今宵のドラマの主人公は野口智也改め森田智也の弟、森田直人で、演じたのは岡田将生。その少年時代を演じたのは林晃平だった。他方、森田智也の少年時代を演じたのはもちろん嘉数一星だが、その大人になった姿を演じたのは向井理だった。向井理は男前ではあるだろうが、いかんせん嘉数一星が余りにも凛々しく美しいので、その大人になった姿として見ると流石に物足りなく見えてしまったのは正直なところ。しかも今宵のドラマ(における新たに撮影されたと思しい回想部分)を見るに、嘉数一星はさらに格好よくなっていたような気がする。思うに、(このドラマには全く関係ないが)ジャニーズ事務所三顧の礼で彼を迎え入れておいた方がよいのではないだろうか。