渡る世間は鬼ばかり第十部第四十六話

TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田壽賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
最終部=第十部第四十六話。
次週の最終回を前に、今宵は二時間もの特別版。しかし放映時間こそ通常の二倍でも、内容が通常の二倍あったかどうかは定かではない。
一つ確実に云えることは、登場人物の多くが一気に暴走を始めた感があり、今では田島聖子(中島唱子)が最も常識ある人物であるかのように見える程であるということだ。かつては小島家ラーメン店「幸楽」で一番の問題児と見られていた人が今では一番の常識人と化していることは、このドラマにおいて暴走が常態化していることをよく物語っている。その端的な表れは、結婚式へ向けた小島家と大井家それぞれの動きに他ならない。暴走合戦の観を呈した。小島眞(えなりかずき)と大井貴子(清水由紀)との交際、婚約、結婚が決定するや、その方角へ向けて両家が競い合うように動き始め、もはや止める者はいなかった。
だが、今宵の話における暴走の覇者は、かの長谷部力矢(丹羽貞仁)に他ならなかった。妹の長谷部まひる(西原亜希)が誰かに恋をしているらしいことを察した彼は、その相手が実は森山壮太(長谷川純[ジャニーズJr.])ではないのかという小島眞からの推理を聴くや、長谷部まひるに真相を糺し、間違いないことを確かめた上で今や森山壮太の説得にかかったのだ。
もともとは極めて無口だった彼は、やがて饒舌気味にはなっても、冷静ではあり続けていたはずだが、今宵に至ってはついに激情を顕わにした。あんなにも激しい側面がこの人にあったということにも驚かされたが、この人がこんなにも重要な役割を担う登場人物と化したこと自体にも驚かされた。こうなるだろうとは予想したこともなかった。最終回を前にした今宵のこの話の、事実上の主人公は彼だったと云うも過言ではない。