木村拓哉主演ドラマ南極大陸第二話

TBS開局60周年記念。日曜劇場「南極大陸」。第二話。
先週の第一話に続いて昨夜の第二話も、見応えある話を畳み掛けるように連ねたような濃厚な展開を見せていて、実に熱かった。中でも熱かったのは無論、南極へ近付きつつあった地点で襲い掛かってきた突然の嵐に南極観測船宗谷」が大いに揺れ、窓から入ってきた海水に船内が浸水し、同時に、厨房には火の手が上がったとき、それまでは結束力を欠いていた寄せ集めの観測隊員たちがこの危機に対処するため一致団結して行動し始めた場面だ。
ここで注目に値するのは指揮系統が単調ではなく、むしろ隊員同士で対等に相互的、相補的だった点ではないだろうか。もちろん誰よりも率先して行動する者はいたし、的確な対処方法を誰よりも迅速に判断できる者はいたが、他の者たちは皆、自発的にそれに追随し、足りない面に気付くや速やかに補佐して、そうして助け合っていたと見ることができる。
南極における観測と越冬の難事業を成し遂げるためには死をも恐れない勇気だけではなく、むしろ相互の生命を預け合う信頼と連帯こそが必要であることを倉持岳志(木村拓哉)は主張していたが、それがこの突然の危機の中で鮮やかに実現した。しかもその連携の中心にあったのは、倉持岳志に最も反発していた鮫島直人(寺島進)に他ならなかった。
犬塚夏男(山本裕典)は、何があっても犬ゾりの犬たちを守れ!という倉持岳志からの指令を守ろうとしていたが、人間たちが死の間際にあるような状況で、犬を優先しようとする彼の行為が他の多くの隊員たちの理解を得るのは難しいに相違ない。負傷して廊下に倒れていた山里万平(ドロンズ石本)を介抱していた嵐山肇(川村陽介)が犬塚夏男に冷ややかな態度を取ったのを、責めることはできない。それでも結局は、嵐山肇も山里万平も、自ら進んで犬と犬塚夏男の救助に走った。犬たちを含めた観測隊員全体の使命と連帯を考えるからこその行動だったはずだ。
同じとき、日本では横峰新吉(吉沢悠)の妻が双子を出産していた。出産の場には倉持岳志の妻の妹である高岡美雪(綾瀬はるか)と、鮫島直人の妻である鮫島純子(加藤貴子)が立ち会っていた。南極観測隊員の家族に対する政府の報告会で三名は知り合って、仲間として、協力を約し合っていたのだ。しかし現時点では多分、横峰奈緒美(さくら)の出産を高岡美雪と鮫島純子が見守っていた事実を、横峰新吉も倉持岳志も鮫島直人も知らない。知らなくとも連帯は生まれていた。それもまた熱い話ではないだろうか。