仮面ライダーフォーゼ第八話

仮面ライダー生誕40周年記念作品「仮面ライダーフォーゼ」。
第八話「鉄・騎・連・携」。
如月弦太朗(福士蒼汰)と大文字隼(冨森ジャスティン)の和解。それは、大文字隼の言動に垣間見える矛盾を如月弦太朗が見破り、云わば痛いところを突いて、そして痛いところを突かれた大文字隼が己の本心を、胸中に抱え込んでいた苦悩を泣きながら明かしたのに対し、如月弦太朗が泣きながら全てを受け止めたとき生じた。
こうして冷静に要約してみると意外に無理のある展開だったようだが、実際にドラマを見ている間は殆ど無理を感じなかったのは、このドラマに勢いがあるからだろう。具体的に云えば、登場人物に愛嬌があるからだろう。大文字隼の今までの言動は殆ど常に不快だったが、大文字隼は決して不快な奴ではなかった。それがここでも活きていた。
大文字隼は今まで如月弦太朗の前で(そして吾等視聴者の前で)かなり嫌な言動を数多く見せ付けてきたが、それらは全て彼の厳格な父親からの云い付けに従った結果だった。彼は父親の期待に応えるため、父親の細かな指示の全てに忠実に従って行動してきたが、その選択も結果も彼自身には納得ゆくものでもなければ楽しいものでもなく、殆ど常に内心どこか違和感を抱いてきた。こうして生じる満たされない思いが、ますます彼を傲慢な奴に仕立ててしまっていたのだ。
如月弦太朗の凄いところは、これまで反発し合っていた大文字隼のこのような内面を知った瞬間、その苦悩に一緒に涙を流しながら、そこに潜んでいる矛盾をそのまま受け止めたことだ。大文字隼の自由への欲求を肯定すると同時に、父親の期待に応えたいという彼の思いをも決して否定することなく受け止めたのだ。それが大文字隼の心を解放した。
歌星賢吾(高橋龍輝)からパワーダイザーを借りてフォーゼ=如月弦太朗を助けた大文字隼に、如月弦太朗は「一緒に戦おう。仮面ライダー部で。この部ならおまえの決断で自由に戦えるぞ」と呼びかけ、「自由」の理由として「表ヅラの名誉がねえからさ。ひそかに学園や街を守るっていう陰の名誉はあるけどな。それは俺たちだけの勲章だ」と宣言した。「俺たちだけの勲章」という語は、いかにも如月弦太朗に相応しく、潔く、爽やかに響いた。
もっとも、「表ヅラの名誉」がないから「自由に戦える」という如月弦太朗の言は大人の視聴者の中でも社会人としてそれなりの肩書で遇され、それなりに活動せざるを得ない者には切実に理解できる話であるはずだが、子どもには理解し辛いかもしれないし、如月弦太朗自身がこの言を理解できていたのかどうかが最も怪しいような気もする。