日本万国博覧会開会式の行進曲

CD「君が代のすべて」は、現行の「君が代」が成立する前に臨時の国歌として演奏された英国軍楽隊長ジョン・ウィリアム・フェントン作曲の「君が代」(演奏:海上自衛隊東京音楽隊)や、現行の国歌「君が代」の原曲にあたる奥好義作曲/林広守撰の雅楽君が代」(演奏:宮内庁式部職楽部)、近衛秀麿編曲の「君が代」(指揮:近衛秀麿/演奏:伯林フィルハーモニック管弦楽団)、宮城道雄作曲の筝曲「君が代変奏曲」(演奏:宮城道雄等)、プッチーニ作曲の歌劇「蝶々夫人」をはじめ、歴史学的に極めて興味深い作品を二十六曲も収録している。
しかるにそれらの中でも、私的に、雅楽に次いで最も興味深く聴いたのは、吉本光蔵作曲「君が代行進曲」(指揮:青木凱征/演奏:海上自衛隊東京音楽隊)だった。その中間部に用いられているのが軍歌「皇国の守り」であり、しかもその作詞者は勝海舟の門人で東京帝国大学文科大学長だった外山正一、作曲者は東京高等師範学校長として初等中等教育の基礎を築き、東京音楽学校を創設して音楽教育の基礎をも築いた伊沢修二であるという点も大いに面白いが、何といっても、この行進曲が昭和四十五年の日本万国博覧会の開会式で大阪府下の小学生たちが演奏していた曲に他ならない点は見落とせない。DVD「公式長編記録映画 日本万国博」で繰り返し聴いたあの行進曲がこんなにも由緒ある作品だったとは知らなかった。

君が代のすべて