ウッドワン講演会
休日。昼に外出して、愛媛県美術館でウッドワン美術館学芸員の講演会を聴講。講演の後半には、岸田劉生と小出楢重との比較論や、浅井忠と黒田清輝の比較論を展開したり、上村松園と鏑木清方と伊藤深水の個性を明快に解き明かしたり、藤田嗣治の銀座ブラジル珈琲店の大壁画や中川一政旧蔵ゴッホ画の流転の話にも及んだりしながらウッドワン美術館コレクションの妙味を論じて、もちろん面白かったが、それ以上に興味深く面白かったのは講演の前半の、ウッドワン美術館の創設者である中本利夫ウッドワン前会長の事績と人柄に関する話。
身近な樹木、森林への愛に裏付けられた自然環境への愛、そして家族愛に裏付けられた隣人愛、あるいは郷土愛に裏付けられた世界愛と云ってもよいのだろうか。企業家としての、海外への進出という局面ではそれが良質の愛国心に裏付けられた国際親善、云わば良質のグローバリズムとして発揮されたらしい。構造改革を伴った現今のグローバル経済と呼ばれる活動は、郷里も外国も分け隔てなく侵略し、徹底的に食い物にして、救いようもない程の貧困に陥れるが、この企業人はその正反対を行って成功したのだ。そして美術品の収集家、美術館の経営者という局面では、誰よりも先ずは自身が美術品を楽しみながら、その楽しみを一人でも多くの人々と共有したいという姿勢として表れていたようなのだ。なるほど、ウッドワン美術館コレクションは素直に見て楽しめる上質な傑作を揃えていて、美術品を鑑賞することの本来の楽しさを思い出させてくれる。
展示会場を出たところにある売店で中本利夫著書二冊を購入して美術館を出たあと、少し遠出して松前町まで買い物に行きたいと思っていたが、生憎、ウォークマンの電源が切れそうになっていたので充電するため帰宅。充電完了まで横になって休憩していたところ何時しか寝てしまい、起きたときには夕方になっていた。