仮面ライダーフォーゼ第三十七話

仮面ライダー生誕40周年記念作品「仮面ライダーフォーゼ」。
第三十七話「星・徒・選・抜」。
今朝の一番の見所は、監視カメラで四方から見張られている閉鎖空間に水瓶座ゾディアーツが出現して、それに立ち向かうべく如月弦太朗(福士蒼汰)がフォーゼに変身しようとしたとき、野座間友子(志保)が折鶴をまるで手裏剣のように四方のカメラに投げつけてレンズを塞ぎ、フォーゼの出現の様子を監視の眼から隠したところ。
ところで、このドラマでは時折、登場人物の造形が盛大に破綻する局面、あるいは破綻が露見する局面がある。
メテオ=朔田流星(吉沢亮)がフォーゼ=如月弦太朗を殺害してしまった場面はその最も極端な、最悪の例だった。殺害のあとには再生があって、ゆえに如月弦太朗が今も生きているとはいえ、殺害した当人には殺害された者を再生させる能力がなく、再生させる可能性があることの認知もなかった以上、これは救いようもない悪事だった。こんな場面をあっさり入れてしまったドラマ制作者の頭の悪さこそが救いようもない。
それでもなお、朔田流星が視聴者から愛される登場人物であり続けているとすれば、それは如月弦太朗が朔田流星を許して愛しているからである以上に、やはり普段の朔田流星が愛され得る人物として造形されているからだろう。これは演者の技量と容姿の賜物でもある。
朔田流星とは対照的であるのが城島ユウキ(清水富美加)。決定的に致命的な一場面があるわけでもないが、造形が破綻している。今までの物語を通して徐々に堆積されてきた小さな破綻が、この人物に照明を当てた今朝の話において一挙に露見したと云える。設定の失敗が大きいだろうが、演技の失敗もあるだろう。
なにしろ、城島ユウキを敵視する水瓶座ゾディアーツ=エリーヌ須田(滝沢カレン)の言い分が圧倒的に正しいとしか思えないのだ。
例えば、ロボット制作の試験において重要な部品が紛失した際の城島ユウキの対応はどうだったか。城島ユウキ自身が部品を隠蔽してエリーヌ須田の提案を邪魔した疑惑については、次週まで真相が明かされないはずであるから今は問わない。多分、城島ユウキには何一つ悪意がなかったという真相が明かされることだろう。
しかし部品の隠滅が城島ユウキの犯行ではなかったとしても、しかも不可欠の部品の欠損という大きな危機を上手く切り抜けた城島ユウキの提案が咄嗟の、しかも的確な判断だったとしても、そもそもロボット制作に要する知識と技術がエリーヌ須田のものでこそあれ、断じて城島ユウキのものではないという事実を忘れてはならない。城島ユウキはエリーヌ須田の刻苦勉励の成果を濡れ手で粟で強奪して横領してしまったようにしか見えない。
普段の城島ユウキが、己を前に出すよりも他人を立てるような人物だったなら、多分このときの行動も緊急事態における咄嗟の対応として見えたのだろうが、生憎そうではない。城島ユウキにもっと自然な明るさと愛嬌があったなら見え方も違っていたのだろうが、生憎そうではない。