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先月三十一日付で京都大学の都市社会工学専攻の准教授を退官し、今月一日付で経済産業省へ復帰した中野剛志元准教授の、京都大学教官としての最後の発言を収録した番組「超人大陸」をニコニコ動画で見ることができる。
興味深い話が幾つもあるが、特に面白いのは、TPP問題で経済産業省の政策を厳しく批判した中野剛志准教授が経済産業省に復帰できる理由についての説明。
経済産業省の課長補佐だった人物が経済産業省の政策を批判する場合、人は内情や機密の暴露を期待するだろうが、実は中野剛志准教授はその点については国家公務員倫理をどこまでも遵守していた。あくまでも一教員、一研究者、あるいは一国民として、一般公開されている情報のみを徹底的に活用し、深く読み抜くことによって激越な批判を展開してみせていたわけで、国家公務員の守秘義務に違反する罪は一切犯していなかった。
その点において、職務を通して得た知見と権威で逃げ切ろうとする所謂「脱藩官僚」の連中とは違っていたのだ。
さらに大きな話として、所謂「脱藩官僚」の連中が世論に迎合して官庁を批判しつつ、実際には却って国民の大部分を苦しめることにしかならない政策を擁護しているのに対し、中野剛志准教授は世論に迎合した官庁を批判し、国民を苦しめる政策を攻撃してきた。この点においても「全体の奉仕者」としての国家公務員の責任、義務にどこまでも忠実であり続けているわけで、官界を追放される謂われはなかった。
退官記念談話「http://www.nicovideo.jp/watch/sm18003471」。

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