仮面ライダーウィザード第四話

平成「仮面ライダー」第十四作「仮面ライダーウィザード」。
第四話「人形とピアニスト」。
冒頭に一つの事実が提起されて、その事実の含意が、今朝の話を通して明かされた。今後の物語にも永く深刻な影響を与えないはずのない事実だった。
その重要な事実というのは、コヨミ(奥仲麻琴)が恐らくは定期的に、操真晴人(白石隼也)から魔力を注入されなければならない身であるらしいということ。そしてそのことをコヨミは負い目のように感じている様子だった。これに関連して、コヨミはドーナツや目玉焼のような人間の食べ物を摂ろうとはしないという事実も描かれた。
これらの事実の重要性を強調したのは、これらの事実の提示の直後に、さらに重要な、しかも不吉な事実が追加されたことだった。なにしろ、ファントムが出現したことを察知したコヨミは、それを受けて直ぐに出動してウィザードに変身し、問題を解決しようとしていた操真晴人を呼び止めて「今日は…気を付けて」と告げたのだ。
このように畳み掛けられた事実が明らかにするのは、(1)コヨミは操真晴人から注入される魔力によってしか生きることができないということ、(2)その魔力は、操真晴人がウィザードとして闘うためには欠かすことのできない魔力を、分け与えられたものであるということ、ゆえに(3)魔力をコヨミに分け与えた直後の操真晴人はウィザードとして存分に闘い得る状態にはないということに他ならない。
今までの時点では殆ど無敵の強さを誇示してきたウィザード=操真晴人にも実は解決できそうもない弱点があると示唆されたわけだが、冒頭のこの不安は、今朝の話の全体を通して徐々に確かめられた。
不安を確定させてゆく過程が段階を追うように徐々に盛り上がる形を取り得たのは、今回のファントムとゲートがともに厄介な性格の持主だったから。ファントムは怠惰で無気力なケットシー(ベルナール・アッカ)。彼は意欲を欠いていても、メドゥーサ(中山絵梨奈)が撤退を許さないから、彼は撤退、逃走と再出動を繰り返した。そのことが操真晴人の身体の活力、否、正しくは魔力を徒に消耗させた。
他方、ゲートはピアニスト志望の音楽学生、高木栄作(佐藤永典)。幼時から天才の称をほしいままにして音楽大学にも推薦入学を果たし、期待されていたが、最近は不振で、当人としては自身の高い理想に到達できない己の現状に苛立つ他なく、希望を失いかけている。既に希望の乏しい者を巨大な絶望に陥らせるのは難しく、ケットシーも戸惑わざるを得なかった。この迷いは、操真晴人には不利ではなかった。
だが、操真晴人の魔力を徒に消耗させる上に最も大きな役割を果たしたのは、コヨミに対するメドゥーサの襲撃だった。ここにおいて深刻であるのは、メドゥーサがコヨミを「魔力で動く只の人形」と見破ったことだ。その魔力がウィザードから分け与えられたものである事実をもメドゥーサが見抜いたとは見えないが、今後そこを突いてくる恐れは充分に予想できるから、今回の事件は重要な意味を持つことだろう。