仮面ライダーウィザード第十八話

平成「仮面ライダー」第十四作「仮面ライダーウィザード」。
第十八話「魔力が食事」。
仁藤攻介(永瀬匡)が「古の魔法使い」と呼ばれるビーストに変身するようになった原因を、彼自身が明かした。
かつて大学で考古学を勉強していた彼は、中央アジアかどこかの仏教遺跡を探索していたとき、謎の洞窟へ引き込まれ、そこでファントム集団の襲撃を受けると同時に、古の魔物「キマイラ」から魔法の指輪と変身ベルトを授けられ、結果、ビーストに変身する力を身に付けたのと同時に、ファントムを食糧として自身の内に取り込み、キマイラに捧げるようになった。
仁藤攻介自身はもともと普通の人間であるから普通の人間の食べ物を摂取することで生きてゆけるはずだが、体内に飼っているキマイラはファントムを摂取して生きるので仁藤攻介にファントムを摂取させる必要があり、しかるにキマイラは食糧を得ることができない状態に長く置かれた場合、仁藤攻介の生命を奪うので、結局、仁藤攻介は食糧としてのファントムを摂取し続けなければ生きてゆくことができない。
ウィザードに変身する操真晴人(白石隼也)はファントムを全て消し去らなければならないと考えているが、仁藤攻介は自身の生命の維持のための食糧としてファントムを必要としている以上、ファントムを全て消し去られては困る立場にあり、ゆえに両者の間には解決できない対立がある。このことについては既に先週ここに書いたが、そもそも誰でも容易に想像できることだろう。実際、ファントム陣営の大将であるメドゥーサ(中山絵梨奈)は早くもそのことに目を着け、仁藤攻介を騙して操真晴人に敵対させることに成功したのだ。
無論この誤解は直ぐに解けるに相違ない。なにしろ仁藤攻介はメドゥーサから、ゲートからファントムを産出することができるという話だけは聞かされたが、その産出が何を物語るのかについては何も聞かされていないからだ。ゲートがファントムを産出できるのはゲートが己の人生に絶望して生きる気力を完全に喪失したときだけであり、ファントムを完全に産出したときゲートは生命を喪失する。こんなにも残酷な事実を知ってもなお仁藤攻介が操真晴人に敵対し続けるとは思えない。
だが、操真晴人と仁藤攻介が和解したとしても、両者の間に解決できない対立が潜んでいることは何一つ変わらない。彼等はどう納得してゆくのか。
他方、操真晴人の側にも何とも不穏な展開があった。やや派手な格好をしたスナフキンのような青年ファントム(前山剛久)がコヨミ(奥仲麻琴)の前に現れて、黄色の魔法石をウィザードに与えるべくコヨミに託したのだ。あらゆるファントムに共通の敵としてファントム皆に知られている「指輪の魔法使い」のために当のファントム中の一員が新たな武器を提供するのは、一体どのような意図に発する行為か。
それにしても、操真晴人の人物像は仁藤攻介と組み合わせ、対比させることで最高度に面白くなる…ということを、制作者は予め計算していたのだろうか。