仮面ライダーウィザード第二十三話

平成「仮面ライダー」第十四作「仮面ライダーウィザード」。
第二十三話「決戦」。
フェニックス=ユウゴ(篤海)に対してウィザード=操真晴人(白石隼也)が選択した「決着」の仕方には、殆ど戦慄をも惹起しないではいない程の凄まじさがあった。倒されても倒されても必ずや蘇り、蘇るばかりか蘇る度に強くなってゆくフェニックスを完全に退治するための唯一期待できる方法は、魔力を消費できるビースト=仁藤攻介(永瀬匡)に消化させることの外にはないのではないか?とは視聴者の誰もが思い付くところであるだろうし、劇中でも仁藤攻介はそのように提案していた。だが、操真晴人の選択は正反対の方向へ行った。厄介なフェニックスを消去するのではなく、むしろ永遠に生と死を繰り返させることにしたからだ。
ウィザードは最大限の魔力を動員してフェニックスを投げ飛ばして、遥か遠く、太陽に着地させた。そこにおいてフェニックスは太陽の熱で焼かれて苦しんで瞬時に死んで、死んでは蘇って再び熱で焼かれて苦しんで瞬時に死に、それでも蘇って焼かれて死んで、しかるにそれで終わることなく蘇っては焼かれる…ということを永遠に繰り返さなければならない。不死身であることは苦痛から逃れられないことでもあり得る。
操真晴人はフェニックスに「おまえを倒す気はない。不死の体を呪うんだな。永遠に死と再生を繰り返せ。おまえに、フィナーレはない」と宣告した。
実に意表を突く作戦で、驚嘆せざるを得ない。
フェニックスを太陽まで投げ飛ばし得てしまう程にも巨大な魔力をウィザードが発動し得たのは、第二十一話において、白い魔法使い(声:高階俊嗣)の儀式を受けて、ウィザードの四つの姿を同時に出現させる力を獲得したからだった。これは四つの姿に現し得る一つの力を同時に四つに現したのであり、換言すれば、持てる力を四倍に増大させたのであると解されるが、今回、それをさらに一つに集めて「オールドラゴン」と呼ばれる強大な魔力を出現させたのだ。
操真晴人は「全ての魔力を一つに。これが最後の希望だ」と告げたが、そうして出現した新たなウィザードの姿を見た白い魔法使いは「これで一人完成した」と呟いた。白い魔法使いがウィザードを支援してきたことの目的がこの「完成」の達成にあったのは明らかだが、その狙いが何であるのかは未だ明らかではないし、これが操真晴人にどのような影響を生じるのか、それが悪影響ではないのかどうかも判らない。
他方、フェニックスを失ったメドゥーサ(中山絵梨奈)に、ソラ(前山剛久)が接近した。ファントムとしての彼の名をグレムリンと云うらしい。
ソラの一連の行動の狙いは、フェニックスを消してその役割を奪うことにあったに相違ないとは思われるが、案外、ウィザードを「完成」へ導くことでもありはしなかったか?とも憶測される。
どうでもよいことだが、フェニックスの身体における赤い部分と白と黒の部分との配置を見る限り、その姿は映画化で話題になっている「変態仮面」に近い格好になっているのかもしれないことに気付いた。
仁藤攻介には良い台詞も面白い台詞も多かったが、特に素晴らしかったのは「おい、待て、俺が行く。おっと、解ってる。みなまで云うな。今の凜子ちゃんには晴人が必要だ。だから俺が代わりに行ってやる。不死身のフェニックスを倒せば、かなりの魔力が食えるだろう…なんて、全然思ってないぞ」。