仮面ライダーウィザード第二十九話

平成「仮面ライダー」第十四作「仮面ライダーウィザード」。
第二十九話「進化する野獣」。
ウィザード=操真晴人(白石隼也)はビースト=仁藤攻介(永瀬匡)の「進化」した姿を見て「ワオ!派手!」と地味に驚いていたが、ビーストの派手な姿は仁藤攻介の豪放磊落な言動によく似合っている。しかるに彼のその明るさは人柄に因るだけではなく、真理の探究に徹する人生観にも因るようだ。
かつて彼は海外に旅行して古代遺跡を発掘していた際にビーストの指輪とベルトを発見し、同時にキマイラに目を着けられて憑り憑かれた。凄まじい事態だが、これを彼は真理の探究のための好機と受け止めた。自らビーストに変身して戦うことを通じて、古代の遺物である指輪とベルトの意味を探り、キマイラの謎に迫りたいと考えた。
だから彼は、指輪とベルトを盗まれて新たな魔力を摂取できなくなって、胸中のキマイラとともに餓死しかねない事態になってもなお、ウィザード=操真晴人の力でキマイラを退治してもらう道を選択したくはなかった。
真理の探究のためには生活も、生命さえも賭けることができる精神が、仁藤攻介の豪放磊落の根底にあると判る。
だから仁藤攻介は、同じ考古学の学徒である中本治(有薗芳記)を同志と見ていて、信頼していたし、責める気にも、殴る気にもなれなかった。ついには中本治もその心に応えて、仁藤攻介から盗んだ指輪とベルトを返却しただけではなく、自身が発掘してきた遺物をも仁藤攻介に提供した。その遺物を用いてビーストは「進化」した。
中本治を唆して仁藤攻介から指輪とベルトを盗ませるように仕向けたのはグレムリン=ソラ(前山剛久)の仕業だった。
敵か味方かを問わず誰にでも陽気に接しては何れにも混乱を惹き起こし続けるソラに対して予て強い不信感を抱いてきたメデューサ中山絵梨奈)は、その行為の狙いが何であるのかを詰問した。これまで誤魔化し続けてきたソラは遂に、しかし普段と変わらない陽気な口調で「僕は全てを知りたいのさ。サバトのこと、魔法使いのこと、ワイズマンの知ってること全てをね」と答えた。
そしてソラの狙いが的中したかどうかは定かではないにしても、ソラの仕業の結果としてビーストが「進化」を遂げたとき、その様子を見物しながらソラは「これでもファントムを増やし続けようとするのかな?ワイズマンは」と呟いた。いつになく、陽気ではない口調で。ソラの関心はファントム陣営を率いるワイズマンにある。